取引先に提案しても反応が薄いと、営業担当者は「手応えがない」と感じます。上司へ状況報告をする場面では、状況を短く伝えられる表現が欲しくなります。
「暖簾に腕押し」は、まさに“手応えがない”状態を一言で表せることわざです。
ただし「暖簾に腕押し」は比喩が強く、相手を悪者に見せる可能性もあります。
この記事では、辞書の意味を軸にしながら、社内で使う場合/対外では言い換える場合を整理し、すぐ使える例文までまとめます。
[著者情報]村上 恒一(むらかみ こういち)|国語講師・ビジネス文章校閲
慣用句や敬語の「意味のズレ」を正し、社内外の文章を“角が立たない形”に整える仕事をしています。ことわざは便利ですが、相手を断定すると失礼になりやすい表現でもあります。この記事では「暖簾に腕押し」を誤用せず、使い分けまでできる状態をゴールにします。
暖簾に腕押しは「手応えがない」の比喩
**結論として、「暖簾に腕押し」は“働きかけても手応えがなく、効果が感じられない状態”**を表します。
暖簾(のれん)は布なので、腕で押しても跳ね返ってきません。腕の力が受け止められない状態が、そのまま「張り合いがない」「効き目がない」という意味になります。
例文(会話)
- 「何度説明しても暖簾に腕押しで、相手の反応が変わらない」
- 「注意しても暖簾に腕押しで、改善が見えない」
例文(社内向けの報告)
- 「提案資料を再送しましたが、現時点では暖簾に腕押しの状態で、次のアクションを検討しています」
【結論】: 社内でも「暖簾に腕押し」を使う場合は、**“相手の性格”ではなく“状況”**を主語にしてください。
なぜなら、「取引先担当者が受け流している」と断定すると、対立を生みやすいからです。「返信が得られていない」「意思決定者が不明」など、観測できる事実に寄せるだけで、次の打ち手が立てやすくなります。
誤用しないコツは「相手を断定しない」こと
「暖簾に腕押し」には、辞書上「言っても効果がない」「相手がうまくあしらう」という説明が付くことがあります。
この説明があるため、「暖簾に腕押し」は**“相手が受け流している”ニュアンス**を帯びる可能性があります。
失礼になりやすい使い方(避けたい例)
- 「A社の担当者は暖簾に腕押しだ」
この言い方は、担当者の人格評価に見えやすく、社内でも空気が悪くなります。
角が立ちにくい使い方(おすすめ)
- 「A社案件は、提案への反応が薄く、結果として暖簾に腕押しの状態が続いている」
この言い方は、“案件の状態”を説明しており、次の行動に繋げやすくなります。

類語との違いがわかる比較表(糠に釘・豆腐に鎹 ほか)
「暖簾に腕押し」と近いことわざは複数あります。似ているからこそ、比喩がズレると文章の説得力が落ちます。
| 表現 | コアイメージ | 向いている状況 | ひと言で言うと |
|---|---|---|---|
| 暖簾に腕押し | 押しても手応えがない(空振り感) | 働きかけの効果が見えない/反応が薄い | 手応えゼロ |
| 糠に釘 | 打っても刺さらない(手ごたえの無さ) | 注意・忠告が効かない/改善しない | 効かない |
| 豆腐に鎹 | 固定できない(効き目がない) | 叱っても効果がない/手段が無効 | 手段が無効 |
| 馬の耳に念仏 | 聞いても届かない(聞き流し) | そもそも話を聞かない/意図が届かない | 聞く気がない |
※「糠に釘」「豆腐に鎹」は“効かない”方向が強く、「暖簾に腕押し」は“反応が返ってこない”空振り感が出やすい、と覚えると選びやすいです。
英語で近い言い方は?
直訳で「pushing a noren」は通じません。英語では、相手が反応しない状況の比喩として、次の言い方が近くなります。
- be like talking to a brick wall(レンガの壁に話しているみたい)
Cambridge Dictionaryは、この表現を「相手が聞いていない/反応しない」状況として説明しています。
英語は“壁”の比喩で「反応が返らない」を表すため、「暖簾に腕押し」の“空振り感”に寄せたい場合でも、まずは「brick wall」で十分に通じます。
FAQ
Q1. 「暖簾に腕押し」は失礼な言葉ですか?
「暖簾に腕押し」自体が失礼語ではありません。問題は、誰に向けて、何を主語にして使うかです。取引先担当者の人格評価に見える言い方は避け、案件状態として使うと安全です。
Q2. 取引先に直接メールで使ってもいいですか?
取引先へのメールでは、ことわざの比喩が強く伝わり、相手が“受け流している”と受け取る可能性があります。対外文は「反応が得られていない」「進捗が確認できていない」などの中立表現に寄せるのが無難です。
Q3. 「暖簾に腕押し」の対義語は?
定番の対義語が一語で固定されているわけではありませんが、意味の反対は「手応えがある」「話が通じる」「反応が返る」などが近い表現になります。
まとめ & CTA(行動喚起)
- 「暖簾に腕押し」は“手応えがない/効果がない”状態を表すことわざです。
- “相手が受け流す”含みが出る場合があるため、対外コミュニケーションでは中立表現への言い換えが安全です。
- 類語は似ていますが、比喩の焦点(効かない/届かない/空振り)が違うため、比較表で選ぶとミスが減ります。
今日から使える「社内報告」テンプレ(コピペ用)
- 「A社案件は提案への反応が薄く、現状は暖簾に腕押しの状態です。意思決定者の確認と、次の接点づくりを進めます。」