荷物が増えてきた中小運送会社の社長や配車担当にとって、10トントラックは「いつか持ちたい一台」です。
一方で、10トントラックは、同時に「毎月の固定費がずっしり乗った一台」でもあります。
この記事では、10トントラックのスペック解説にとどまらず、「自社が今、10トントラックを導入すべきかどうか」を判断するための考え方を、元運送会社側の目線で整理します。
- 10トントラックの基本的な考え方
- 導入を決めるための「荷物・ヤード・人」の3つの軸
- 「10トン1台」と「中型2台」の具体的な比較
- 導入前に押さえておきたいQ&A
まで、一気通貫で押さえられるように構成しています。
この記事を読み終える頃には、「今はまだ様子見」「まず1台だけ導入」「本格的に10トン中心に切り替え」のどれが自社に合うのか、かなりハッキリ見えてくるはずです。
著者情報
著者:山本 剛|元運送会社経営者・物流コンサルタント
- 地方の運送会社2社で、老朽車中心の車両構成から「10トントラックを軸にした幹線輸送モデル」への切り替えを担当
- 10トントラック導入を含む車両入れ替えで、粗利率を約5%改善した実績あり
「10トントラックは、会社の数字に効く“攻めの一台”ですが、条件が揃っていないと資金と人を縛る“重たい一台”にもなります。この記事では、営業トークではなく、現場と数字の両方を見てきた立場から、社長と同じ目線で『導入する・しない』を一緒に考えていきます。」
なぜ今、10トントラック導入が“気になる”のか
10トントラックの導入が気になっている中小運送会社には、共通する背景がいくつかあります。
- 荷物が増えてきて、中型トラックでは厳しくなってきた
- 「中型トラック2台で走らせている便を、10トントラック1台でまとめたい」
- 「積み残しが出るので、10トンがあればスッキリ積めそうだ」
- 荷主からの一言が気になっている
- 「10トントラックも扱っていますか?」
- 「幹線は10トントラックでまとめたいのですが」
といった問い合わせや要望が増え、「10トンを持っていないことで仕事を逃しているのではないか」という不安が出てくる。
- 物流環境の変化に対応したい
- 労働時間の規制強化やドライバー不足によって、「便数を増やすより1便の積載量を増やしたい」という方向性が強くなっている。
- その流れの中で、「10トントラックによる幹線輸送」への関心が高まっている。
- 同業他社の動きが気になる
- 近隣の運送会社が10トントラックを導入し始めている。
- 「うちもそろそろかな」と感じる一方で、コストや人材面への不安が消えない。
こうした状況の中で、多くの社長は心の中で次のように考えています。
「10トントラックを入れれば売上は増えそうだが、本当に利益までついて来るのか」
「大型ドライバーがいないのに、10トントラックだけ増えても回らないのではないか」
この記事のゴールは、こうした不安を一つずつ分解し、条件が揃っている会社は“前向きに導入”、条件が揃っていない会社は“今はまだ見送り”という判断を、自信を持って下せる状態にすることです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 10トントラック導入は「勢い」ではなく「条件」で決めると失敗しにくくなります。
なぜなら、荷物の構成や納品先の条件、ドライバーの免許状況によって、同じ10トントラックでも利益が出る会社と赤字になる会社がはっきり分かれるからです。条件さえ整理できれば、「今はやめておこう」という判断も、前向きな一歩になります。この視点が、運送会社の長期的な安定経営の助けになれば幸いです。
10トントラック導入を判断する3つの軸【荷物・ヤード・人】
10トントラックを導入するかどうかは、感覚ではなく、「荷物・ヤード・人」の3つの軸で整理すると判断しやすくなります。
1. 荷物の軸:荷量と案件構成は10トン向きか
10トントラックの導入を検討する前に、次のようなポイントを確認してください。
- 10トントラックで走らせたいルートに、常に近いボリュームの荷物があるか
- 「積み残しを減らしたい」「便数を減らしたい」路線や案件が、明確に存在するか
- 荷物の重量や容積が、実際に10トン相当の積載に近いか
中型トラックの積み残しを補う程度の荷量しかない場合、10トントラックの積載力が持て余しになる可能性があります。
荷物の軸チェックリスト(YESが多いほど10トン向き)
- 中型トラック2台で走らせている固定ルートがある
- 同じ荷主からの荷物が、毎回ほぼ満載に近い状態で出ている
- 重量や容積が大きく、1台にまとめられれば明らかに効率が上がる
- 長距離・幹線輸送としてまとめて運びたい案件がある
2. ヤードの軸:ヤード・納品条件に10トンが入れるか
10トントラックと中型トラックの違いは、積載量だけではありません。車両の全長・全高・最小回転半径が変わり、次のような影響が出ます。
- 集荷先・納品先の敷地の広さや高さ制限に引っかからないか
- 進入路の幅や、曲がり角の余裕は十分か
- 倉庫のホームの高さや構造が、10トントラック向きか
ヤード条件が合わないと、「荷物はあるのに10トントラックでは入れない」という状況が生まれます。このパターンが最もストレスが大きく、現場からの不満にもつながります。
ヤードの軸チェックリスト
- 想定している集荷先・納品先で、すでに他社の10トントラックが出入りしている
- 納品先の担当者から「10トンでも問題なく入れる」と確認している
- 自社構内の駐車スペース・整備スペースに、10トントラックを安全に置ける
- 高さ制限のある立体駐車場や狭い商業施設への納品がメインではない
3. 人の軸:大型免許ドライバーを確保できるか
10トントラックは、大型自動車免許を持つドライバーがいなければ動きません。
現在のドライバー不足の環境では、この「人の軸」が最も重い問題になることが多いです。
- 現在、大型自動車免許保有者が在籍しているか
- 10トントラック専任で任せられる人材がいるか
- 中長期的に、大型自動車免許取得支援や採用計画を立てられるか
10トントラックは、車両だけ導入しても、運転できる人が辞めた瞬間に“動かない資産”になります。
ここをどう設計するかが、導入の成否を大きく左右します。
人の軸チェックリスト
- 大型自動車免許保有ドライバーが1人以上在籍し、採算の取れるルートを任せられる
- 中型ドライバーで「今後大型免許を取りたい」という意欲のある人がいる
- 大型ドライバーの採用に、一定の予算と時間を割く覚悟がある
- ドライバー1人が抜けても、別の人材でフォローできる体制を将来的に整えたい
10トン1台 vs 中型2台? コストと現場感で比べる判断シート
中小運送会社の社長から最もよく受ける質問の一つが、
「10トントラックを1台導入するのと、中型トラックを2台増やすのはどちらが得か」という質問です。
この問いには、案件構成や距離、ドライバーの数など様々な条件が絡むため、一概に「どちらが正解」とは言えません。
ただ、判断のたたき台として、次のような比較をイメージしてみてください。
| 項目 | 10トントラック1台 | 中型トラック2台 |
|---|---|---|
| 積載のイメージ | 1便にまとまった荷物を一気に運べる | 2便に分けて柔軟に対応しやすい |
| 必要ドライバー数 | 大型自動車免許保有ドライバー1人 | 中型免許ドライバー2人 |
| 走らせるルートのイメージ | 幹線・センター間・長距離向き | 近距離配送・細かな納品先が多いルート向き |
| ヤード・納品先 | 広いヤード・大型対応の倉庫向き | 狭い道・小規模店舗にも入りやすい |
| 仕事の汎用性 | ルートが限定されると稼働が落ちやすい | 様々な案件に振り分けやすく稼働を維持しやすい |
| リスクのイメージ | 1台止まると、その便が丸ごと止まる | 1台止まっても、もう1台で最低限カバー可能 |
この比較表から見えてくるポイントは次の通りです。
- 10トントラック1台は「当てにする案件」が明確なほど活きる
- 固定の幹線ルートやセンター間輸送など、「この便は10トンで走らせたい」という仕事がある会社に向いています。
- 中型トラック2台は「仕事の幅の広さ」が強み
- 細かな納品先が多い会社や、日によって案件の構成が変わりやすい会社にとっては、中型トラックの柔軟性が魅力です。
- ドライバー戦略とセットで考える必要がある
- 大型自動車免許保有ドライバー1人を確保するのが難しい会社にとっては、中型トラック2台の方が現実的なケースも多いです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「10トン1台 vs 中型2台」は、売上よりも“止まったときのリスク”で考えると判断しやすくなります。
なぜなら、10トントラックは1台止まると、その幹線ルートが丸ごと止まる一方、中型トラック2台は1台止まってももう1台で最低限のカバーができるからです。売上アップの期待だけではなく、「故障や退職があったときにどう動くか」をセットで考えることが、車両構成の安定につながります。
10トントラック導入前によくある質問Q&A
最後に、10トントラック導入の相談でよく聞かれる質問と、その考え方をまとめます。
Q1. 大型自動車免許保有ドライバーがいません。それでも10トントラック導入を検討してよいですか?
大型自動車免許保有ドライバーが1人もいない段階で、すぐに10トントラックを購入するのは、リスクが高い選択になります。
- 中型ドライバーの中に「大型自動車免許を取りたい人」がいるか
- その人の育成に、時間と費用をかける覚悟があるか
- 将来的に10トントラックを動かせるだけの案件が見込めるか
といった条件が揃えば、「先に人材育成を始めておき、時期を見て10トン導入」を検討する価値があります。
逆に、採用や育成の見通しが立たない場合は、まず中型トラックでの増車やルート見直しから着手する方が現実的です。
Q2. 今はスポット案件が多く、固定便が少ない状況です。それでも10トントラックを導入する意味はありますか?
スポット案件中心の運行形態では、10トントラックの稼働を安定して確保することが難しいケースが多くなります。
- 毎日必ず走らせたい幹線ルートがある会社
- 特定荷主との間に、10トントラックを前提とした長期契約の見込みがある会社
であれば、10トントラック導入が前向きな選択になることがあります。
一方で、日々の案件内容が大きく変わる会社では、中型トラックの方が仕事の幅を広く取りやすく、稼働が安定しやすい傾向があります。
Q3. 10トントラックを導入した後、もし仕事が減った場合はどうすればよいですか?
10トントラックを導入した後に仕事が減るリスクは、どの会社にも存在します。
そのため、導入前に次のような「逃げ道」を用意しておくと、心理的な負担がかなり軽くなります。
- 他の荷主や他社との共同輸送など、予備の幹線ルート候補を持っておく
- 中古市場での売却価格や、同業他社への貸し出しの可能性を事前にイメージしておく
- 「10トンが常に満載でなくても採算ラインを維持できるか」を、ざっくりと試算しておく
こうした事前の準備があると、「もし仕事が減ったらどうしよう」という漠然とした不安が、「仕事が減った場合はこの選択肢でカバーする」という現実的なプランに変わります。
まとめ|チェックリストと簡易シミュレーションで「導入する・しない」を決める
ここまで、10トントラック導入を検討する中小運送会社に向けて、考え方の枠組みを整理しました。
ポイントをもう一度まとめると、次の通りです。
- 10トントラック導入は、「荷物・ヤード・人」の3つの軸で条件を確認することが重要
- 固定ルートや幹線輸送の案件があり、ヤード条件と大型自動車免許ドライバーの確保にめどが立つ会社ほど、10トントラックのメリットを活かしやすい
- 「10トン1台 vs 中型2台」の比較では、売上だけでなく、止まったときのリスクと仕事の汎用性もあわせて考える必要がある
- 導入前に、仕事が減った場合やドライバーが抜けた場合の「逃げ道」を用意しておくことで、心理的な不安を大きく減らせる
最後に、実際の次の一歩としておすすめしたい行動は1つです。
自社の荷量・案件・ヤード条件・ドライバー体制を、この記事の3つの軸チェックリストに当てはめて書き出してみてください。
紙でもExcelでも構いません。
チェック項目を埋めていくうちに、10トントラック導入が今の自社にとって「攻めるべき一手」なのか、それとも「次のステージで考えるべき一手」なのかが、自然と見えてきます。
10トントラックは、使い方しだいで会社の利益構造を変える力を持った一台です。
焦らず条件を整理し、納得のいくタイミングで、最適な一台を選ぶ判断材料として、この記事を活用してもらえたらうれしいです。