「『不躾なお願いですが』と打ってみたものの、これってむしろ失礼なのでは?」
ビジネスメールを書いていると、ふと手が止まる瞬間がありますよね。
結論から言うと、「不躾なお願い」という表現は、使い方を間違えなければ丁寧なクッション言葉として機能する表現です。
一方で、「不躾なお願い」を乱用すると、メール全体が重くなり、かえって距離を感じさせてしまう可能性があります。
この記事では、
- 「不躾なお願い」の本当の意味とOK/NGライン
- 上司・取引先・社内メンバー向けの相手別テンプレ
- 使うときに失敗しないための3つのコツ
- みんなが迷いがちな“ギリギリライン”のQ&A
を、ビジネス日本語講師としての現場経験も交えながら整理します。
読み終えるころには、「この場面ならこの一文」と、迷いなく使い分けができるようになるはずです。
「『不躾なお願い』って失礼?それとも丁寧?」
まず、いちばん気になるポイントからお伝えします。
結論:場面を選べば「不躾なお願い」は丁寧なクッション言葉
「不躾(ぶしつけ)」という言葉自体は「礼儀に欠けるさま」という意味を持つため、文字だけ見るとかなり強い表現に見えます。
しかし「不躾なお願いですが」と前置きすることで、
「失礼かもしれないと分かった上で、それでもどうしてもお願いしたい」
という謙虚さと遠慮の気持ちを伝えることができます。
つまり、「不躾なお願い」は、厚かましい要求を正当化するための言葉ではなく、自分の立場を下げながら相手への負担を認識していると伝えるためのクッション言葉です。
よくあるシーンをイメージしてみる
例えば、次のような場面を想像してみてください。
- すでに忙しいと分かっている上司に、急ぎの資料作成をお願いしたい
- 取引先に、通常より早い納期で対応してほしいと頼みたい
- 初めて連絡する相手に、急な依頼メールを送らなければならない
このような「相手に負担がかかる」と分かっている状況で、「不躾なお願いではございますが」と添えると、配慮の気持ちを示すことができます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「不躾なお願い」は、“相手への負担を自覚している”ことを示したいときに使う表現です。
なぜなら、多くのビジネスパーソンが「お願いする側なのに、申し訳なさが伝わっていない」メールを書いてしまいがちだからです。自分の立場を少し下げてお願いする姿勢があると、たとえ依頼を断られても相手との関係は穏やかに保ちやすくなります。この知見が、日々のメールの不安を少しでも軽くする助けになれば幸いです。
『不躾なお願い』の本当の意味と、使っていいOKライン・NGライン
ここからは、「不躾なお願い」をもう一歩深く分解していきます。
「不躾なお願い」の意味とニュアンス
「不躾なお願い」は、次のようなニュアンスを含みます。
- 礼儀にかなっていないかもしれないと自覚している
- それでもやむを得ずお願いしたい事情がある
- 相手への負担や迷惑を理解しつつお願いしている
同じ「お願い」でも、「厚かましいお願い」「勝手なお願い」「突然のお願い」「失礼を承知で」など、さまざまなクッション言葉があります。
- 「厚かましいお願い」
→ 自分本位さをやや強めに自覚する、くだけたニュアンス - 「勝手なお願い」
→ 相手の事情を無視しているかもしれないという自覚を強調 - 「突然のお願い」
→ 礼儀よりも「急な連絡」である点を強く意識 - 「失礼を承知で」
→ とてもフォーマルで重い表現であり、目上の相手や重要な場面で用いる表現
「不躾なお願い」は、これらの中でもフォーマル寄りで、丁寧さと謙遜を両立した表現だと考えるとイメージしやすくなります。
「不躾なお願い」のOKライン/NGライン
OKラインに入りやすい場面
- 相手に追加の負担をお願いする場面
- 例:「追加で資料をご作成いただく」「納期を早めていただく」
- 相手にとって想定外の依頼をする場面
- 例:「急な会議参加をお願いする」「別部署に協力を依頼する」
- 初めて連絡する相手に、少しハードルの高い依頼をする場面
NGラインに近づく場面
- 内容自体が明らかに非常識な要求になっている場合
- 軽いお願いに対しても、毎回「不躾なお願い」を使ってしまう場合
- 1通のメールの中で、何度も同じ表現を繰り返してしまう場合
「不躾なお願い」は、依頼内容の「重さ」や「相手の負担の大きさ」に釣り合うときに使う表現だと意識すると、使いすぎを防ぎやすくなります。
相手・シーン別で使える『不躾なお願い』テンプレ&言い換え集
ここからは、すぐにコピペして使えるテンプレートを紹介します。
上司に対する「不躾なお願い」
基本テンプレ
不躾なお願いで大変恐縮ですが、〇〇の資料を明日午前中までにご確認いただくことは可能でしょうか。
少し柔らかくしたい場合の言い換え
急なお願いで恐れ入りますが、〇〇の資料を明日午前中までにご確認いただけますと幸いです。
「不躾なお願い」は、上司に対してもやや重めに響く表現です。
日常的な依頼には「急なお願いで恐れ入りますが」「大変恐縮ですが」など、少しトーンを和らげた言い方を使う方法も有効です。
取引先に対する「不躾なお願い」
基本テンプレ
不躾なお願いで誠に恐縮ではございますが、御社のご都合の許す範囲で、納期を一日前倒しいただくことは可能でしょうか。
もう少し柔らかいテンプレ
大変恐れ入りますが、御社のご都合の許す範囲で、納期を一日前倒しいただくことは可能でしょうか。
取引先に対しては、「不躾なお願い」を使うことで自社の依頼が負担であることを自覚している姿勢を示すことができます。
一方で、毎回のように用いると重たくなってしまうため、「恐れ入りますが」「差し支えなければ」といった表現も組み合わせるとバランスが整います。
他部署・社内メンバーへの「不躾なお願い」
基本テンプレ
不躾なお願いとなり恐縮ですが、今週中に〇〇の件についてご意見をいただけますでしょうか。
カジュアル寄りの言い換え
急なお願いで恐縮ですが、今週中に〇〇の件についてご意見をいただけますでしょうか。
社内メンバーに対しては、上下関係や距離感により、表現の重さを調整することがポイントです。
フラットな関係であれば、わざわざ「不躾なお願い」と言うよりも、「急なお願いで」「お忙しいところ恐れ入りますが」といった表現の方が自然な場合も多くなります。
| 相手 | 推奨クッション表現の例 | フォーマル度の目安 | 使用頻度の目安 |
|---|---|---|---|
| 上司 | 不躾なお願いで恐縮ですが/急なお願いで恐れ入りますが | やや高い | 週に数回まで |
| 取引先 | 不躾なお願いで誠に恐縮ですが/大変恐れ入りますが | 高い | 本当に負担が大きい依頼のみ |
| 他部署・社内 | 不躾なお願いとなり恐縮ですが/お忙しいところ恐れ入りますが | 中〜やや高い | 関係性に応じて調整 |
『不躾なお願い』を使うときに失敗しない3つのコツ
ここからは、「不躾なお願い」を使うときにありがちな失敗と、その改善ポイントを整理します。
コツ1:クッション言葉だけ重くして、肝心の依頼をあいまいにしない
Before
不躾なお願いで大変恐縮ですが、ご対応のほどよろしくお願いいたします。
何をお願いしているのかが曖昧で、相手は判断しづらくなってしまいます。
After
不躾なお願いで大変恐縮ですが、〇〇の資料をご確認のうえ、明日17時までにご返信いただけますと幸いです。
「何を・いつまでに・どのように」をセットで伝えることで、相手は行動をイメージしやすくなります。
コツ2:依頼の背景や事情を一文でもよいので添える
Before
不躾なお願いで恐縮ですが、納期を一日前倒しいただけないでしょうか。
After
不躾なお願いで恐縮ですが、弊社内の決裁スケジュールの都合により、納期を一日前倒しいただけないでしょうか。
依頼の背景を簡潔に添えることで、相手は「理由の分からない無茶振り」とは受け取りにくくなります。
コツ3:お願いしっぱなしではなく、感謝と配慮を必ずセットにする
Before
不躾なお願いではございますが、スケジュール調整をお願いいたします。
After
不躾なお願いではございますが、スケジュール調整をお願いいたします。お忙しい中恐縮ですが、ご無理のない範囲でご検討いただけますと幸いです。
「ご無理のない範囲で」「ご検討いただけますと幸いです」といったフレーズを添えることで、相手の都合を尊重する姿勢がより伝わります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「不躾なお願い」というクッション言葉だけで丁寧さを出そうとせず、依頼の内容・背景・感謝のセットで丁寧さを表現してください。
多くの人が、「敬語の一言」を入れ替えることで丁寧さをコントロールしようとします。しかし、実務の現場では、何を依頼しているか、なぜ必要なのか、依頼を受けてくれた相手にどう感謝するかという三点が丁寧さの本質になります。この視点を持てると、表現の選択に振り回されにくくなります。
FAQ:みんなが迷う“ギリギリライン”Q&A
最後に、現場でよく聞かれる質問をまとめます。
Q1. 毎回「不躾なお願い」を使うのは変ですか?
A. 毎回のように「不躾なお願い」を使うと、メールが不自然に重くなります。
日常的な連絡には、「お忙しいところ恐れ入りますが」「急なお願いで恐縮ですが」といった表現も組み合わせて、表現の重さと頻度のバランスを取ると自然になります。
Q2. チャットツール(Slackなど)でも「不躾なお願い」を使ってよいですか?
A. チャットツールはメールよりカジュアルな場であることが多く、「不躾なお願い」はやや堅すぎる印象になる場合があります。
チャットでは次のような表現の方が自然です。
- 「急なお願いで申し訳ないのですが、〇〇を今日中に確認してもらえますか?」
- 「お忙しいところ恐れ入りますが、〇〇の件、少しご相談させてください。」
Q3. フランクな上司にも「不躾なお願い」を使ってよいですか?
A. フランクな上司に対して「不躾なお願い」を使うと、距離感が急に遠く感じられることがあります。
ふだんカジュアルなやりとりをしている場合は、
- 「急なお願いで恐縮ですが」
- 「お手すきの際で構いませんので」
など、普段の距離感を保ちながらも丁寧さを出せる表現を選ぶことをおすすめします。
まとめ:『不躾なお願い』は“自覚あるクッション”として使う
ここまでのポイントを整理します。
- 「不躾なお願い」は、失礼さを自覚したうえで丁寧にお願いするためのクッション言葉
- 依頼内容の重さや相手への負担が大きい場面では、適切に使うことで、配慮と謙虚さを伝えられる
- 一方で、軽い依頼や日常的な連絡で多用すると、メール全体が重く不自然な印象になる
- 依頼の内容・背景・感謝の三点をセットで伝えることで、表現そのものに過度に頼らなくても丁寧さを示せる
- 上司・取引先・社内メンバーごとに、トーンの違うクッション言葉を用意しておくと、迷いが減る
まずは、明日のメールでひとつだけテンプレを試してみることから始めてみてください。
少しずつ自分なりの「言いやすい、でも失礼にならない」フレーズ集が蓄積されていきます。
著者情報
執筆者:山本 由紀
ビジネス日本語講師/元・大手メーカー営業事務リーダー
- 事務・営業部門で10年以上、メール対応・クレーム応対を担当
- 企業研修にて、新入社員向け「メール・チャットの言葉遣い」「ビジネスマナー」研修を年間1,000人以上に実施
- ビジネスメールの基本から、チャット時代のコミュニケーションまでをテーマにした連載・セミナー多数
「完璧な敬語を目指すのではなく、相手が読みやすく、意図が伝わる日本語を一緒に考えていきたいと思っています。」