「直近の売上、まとめておいて」「直近の予定、いつにする?」──この“直近”が曲者です。言葉としては便利なのに、基準日が共有されていないと、人によって解釈がズレて仕事が止まります。結論から言うと、**直近=「基準(いま・指定日)から見ていちばん近い」**で、期間の固定ルールはありません。だからこそ、実務では“数字”で補足するのが安全です。
[著者情報]著者: 佐倉 まどか(ビジネス文書・日本語表現の校閲者)
専門領域: ビジネスメール/社内文書の言い回し最適化、用語の誤解防止
主な実績: 企業向け文章研修・メール添削の実務経験、社内用語集の設計支援
ペルソナへのスタンス: 「相手を責めずに、ズレを潰す言い方」を最短で提案します
直近で困るのは「いつの話?」が決まっていないから
「直近」が揉める原因は、言葉の曖昧さではなく、基準日の不在です。
たとえば会議の場で「直近の数値を見せて」と言われたとき、上司は“この四半期”を想定しているのに、担当者は“先月”で集計してしまう。すると「違う、もっと近いところだよ」とやり直しになります。
現場でよく出る質問も、だいたいこの形です。
「直近って、結局いつからいつまでですか?」──この疑問に答える鍵が、**“基準(いつ時点?)”**の確認です。
【結論】: 「直近」と言われたら、作業に入る前に「基準日」と「幅(何日・何カ月)」を“質問ではなく提案”で差し込んでください。
なぜなら、「直近」は便利なぶん、発言者が無意識に“自分の基準”で話していることが多いからです。ここを最初に合わせるだけで、集計の手戻りが一気に減ります。
「直近」の意味は「基準から最も近い」。期間は文脈で変わる
「直近」は、**距離・時間が“すぐ近い”**ことを表し、過去にも未来にも使われます。
辞書的には「直接で近いこと。すぐ近くのこと」という説明がされています。
直接で近いこと。すぐ近くのこと。
出典: 「直近」- コトバンク(精選版 日本国語大辞典) 3
ただし、ビジネスで一番大事なのはここで、「直近=何日前から何日前まで」という固定の定義はないと解説されることが多いです。だから「直近の出来事」が“数時間前”になる人もいれば、“2〜3日内”になる人もいます。
さらに、「直近の予定」「直近の会議」のように未来を指すこともあれば、「直近の売上」「直近の動き」のように過去を指すこともあります。文脈で決まる言葉です。

仕事でズレない「直近」の使い方は“数字で補足”が基本
実務の正解は、直近+数字(期間)+基準のセット運用です。
メディア解説でも「直近は定義がないので、範囲を指定したいなら数字を挙げる必要がある」と整理されています。
そこで、誤解が起きやすい近い表現を、仕事目線で並べ替えます。
| 表現 | 近さのニュアンス | 期間の決まりやすさ | 典型シーン | いちばん安全な書き方(例) |
|---|---|---|---|---|
| 直近 | 基準から最も近い(過去も未来も) | 低い(文脈依存) | 直近の売上、直近の予定 | 直近1カ月(締め日基準)の売上 |
| 最近 | ここしばらく(多くは過去寄り) | 中(人により幅がズレる) | 最近の傾向 | 最近2週間の傾向 |
| 近日/近日中 | 近いうち(やや公的・ビジネス寄り) | 中(幅が広め) | 近日中に連絡 | 1/10までに連絡します |
| 近々 | 近い将来(予定が未確定でも使える) | 低〜中 | 近々リリース | 1月中旬にリリース予定 |
| 直前 | まさに直前(差し迫る) | 高い(ほぼ直前) | 直前で変更 | 前日〜当日に変更 |
| 間近 | 迫っている(感覚が近い) | 中 | 締切が間近 | 締切は3日後です |
参考: 「直近」には明確な期間定義がない説明、ならびに「近日」「近々」の違いの解説。
「直近」をメール・依頼文に入れるなら、相手が迷わない形に“整形”するのがコツです。
| ありがちな依頼 | 何が危ないか | そのまま使える安全な言い換え |
|---|---|---|
| 直近の売上をください | 範囲(何日・何カ月)がズレる | 直近1カ月(本日基準)の売上をください |
| 直近の会議はいつ? | 未来の“どれ”か分からない | 次回会議(最短日程)はいつが空いていますか |
| 直近の動きをまとめて | 方向(過去?未来?)が曖昧 | 直近2週間の動き(出来事)を時系列でまとめて |
場所の意味で「直近のコンビニ」のように使うケースもあり、この場合は「現時点からいちばん近い距離の場所」という理解でズレにくいです。
FAQ
迷いがちな論点は「過去か未来か」「どれくらいか」「何を基準にするか」に集約されます。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 直近は過去のこと?未来のこと? | 両方あり得ます。「直近の売上」は過去寄り、「直近の予定」は未来寄りのことが多く、文脈で決まります。 |
| 直近は何日くらい? | 固定の定義はありません。必要なら「直近3日」「直近1カ月」のように数字で指定するのが安全です。 |
| 「直近」と「最近」はどう違う? | 「最近」は“ここしばらく”の過去寄り、「直近」は“基準から最も近い”で未来にも使えます。 |
| 「近日中」「近々」との違いは? | 「近日」は数日以内など“近い日で比較的具体”、「近々」はもう少し幅広く、日程が未確定でも使いやすい、と整理されます。 |
| 直近の予定って、次の予定? | 多くの場合は「いちばん近い次の予定」です。ただし予定が複数あるなら「次回」「最短日程」と言い換えると誤解が減ります。 |
まとめ
直近=「基準からいちばん近い」。ここだけ押さえれば、あとは簡単です。
仕事で事故らない運用は、直近+(過去/未来)+数字(期間)+基準のセットにすること。
今日から使える型はこの一文です。
「直近は、いつ時点を基準に、どれくらいの幅で見ますか?こちらは直近1カ月(本日基準)で作成します。」
[参考文献リスト](主要ソース)
| タイトル | 発行元 | URL | メモ |
|---|---|---|---|
| 直近(チョッキン)とは? 意味や使い方 | コトバンク(精選版 日本国語大辞典) | https://kotobank.jp/word/%E7%9B%B4%E8%BF%91-569515 | 辞書定義の確認 |
| 直近とはいつのこと? 直近があらわす期間や使い方… | Oggi | https://oggi.jp/7059067 | 期間に固定定義がない点 |
| 直近の意味とは? いつの期間なのかや使い方… | マイナビニュース | https://news.mynavi.jp/article/20210120-1623315/ | 文脈で変わる点 |
| 近々の意味や使い方、違いを徹底解説! | migi-nanameue(コラム) | https://job.migi-nanameue.co.jp/column/meaning-usage-kinjika-explained/ | 近日・近々の違い |
| 「近日中」とは何日が目安? | office-tsumiki | https://office-tsumiki.com/news/column/in-a-few-days-business/ | 「近日中」の基本整理 |