「看過できない」と書いたつもりが、相手に“怒っている”ニュアンスで伝わってしまった。あるいは、資料で見かけた「看過=目を通す?」に自信がなく、ビジネス文書の一文が止まってしまった——。
結論から言うと、「看過」は“見ていながら放っておく(見逃す)”が中心の意味で、辞書によっては**“ひととおり目を通す”という意味も載ります。**ただし、現代のビジネス文脈では前者で受け取られるのが基本です。
[著者情報]
この記事を書いた人
佐伯 直子(さえき なおこ)/ビジネス文書・言い回し校正者
社内外向けメール、稟議、報告書などの「誤解が起きない日本語」を専門に添削。言葉の温度感(強さ・硬さ)を調整して、伝わり方の事故を減らす支援をしています。
看過の意味は「見て見ぬふり」が基本(もう1つの意味もある)
まず辞書の定義を押さえるのが最短です。
あることを目にしていながら、そのままほうっておくこと。見逃すこと。
出典: 「看過」(デジタル大辞泉) – コトバンク
一方で、国語辞典(日本国語大辞典系)では次のように意味が2つ載ります。
- ① ひととおり目を通すこと
- ② 見ても気にとめないでそのままにしておくこと(見過ごす)
ここが混乱ポイントです。
**現代の一般的・ビジネスの用法は②(見過ごす/放置する)**で読まれやすいので、文書で「目を通す」の意味で使うのは避けた方が安全です(誤解のコストが高い)。
「看過できない」は“見逃せない”より硬く、是正要求が強め
「看過できない」は、ただの感想より一歩踏み込んで、
- 問題として認識している
- 放置するつもりがない(何らかの対応が必要)
という姿勢が入ります。辞書例でも「看過することのできない問題」のように、放置できない重大さのニュアンスで使われています。
使うときのコツ:主語を「私」から「事実」へ寄せる
同じ「看過できない」でも、主語が「あなた」寄りだと刺さります。
ビジネスでは、**“事実→影響→提案”**に寄せると角が立ちにくいです。
例(角が立ちにくい)
現状の運用では誤請求につながる可能性があり、看過できないため、修正案をご提案します。
【結論】: 「看過できない」を使うなら、直後に“次の一手(提案・依頼)”を必ず置いてください。
なぜなら、「看過できない」だけで止めると“非難”に見えやすく、相手が防御姿勢になります。いちばん揉めるのは、言葉の強さではなく「落としどころが見えない状態」です。提案までセットにすると、同じ強さでも“建設的”に受け取られやすくなります。
言い換え・類語の「温度感」早見表(看過/見過ごす/黙認 など)
「看過」は硬めの語なので、状況に応じて言い換えると伝わり方を調整できます。
| 表現 | 温度感(弱→強) | ニュアンス | 向く場面 | 例文 |
|---|---|---|---|---|
| スルーする | 弱 | 口語・軽い | 社内チャット、雑談寄り | この程度なら一旦スルーします |
| 見落とす | 弱〜中 | “気づかなかった” | ミスの説明(謝罪含む) | 私の見落としでした |
| 見逃す | 中 | “気づいたが通す/見ない” | 事実指摘(柔らかめ) | 今回は見逃しますが次回は… |
| 見過ごす | 中〜強 | “気づいたが放置する” | 注意・是正の前振り | この点は見過ごせません |
| 看過する | 強 | 硬い・是正要求が強い | 稟議・報告・対外文書 | この問題は看過できません |
| 黙認する | 強 | “問題だが許す/容認” | ルール逸脱の整理 | 黙認が続くと統制が崩れます |
※「看過=目を通す」の意味も辞書にはありますが、実務文書では誤読されやすいので、「確認する/目を通す」を使う方が無難です。
(類語・用法の整理として TRANS.Biz も参考になります。 )
そのまま使える:ビジネス文書のテンプレ例(角が立ちにくい順)
1)まず柔らかく(確認依頼)
- 懸念があるため、念のため確認させてください。
2)やや強め(影響を添える)
- このままだと影響が大きいため、見過ごせません。
3)強め(看過できない+提案セット)
- リスクが顕在化する可能性があり看過できないため、対応案を共有します。
4)対外向けの硬い文章(是正要求が明確)
- 当該事象は看過できず、再発防止策の提示をお願いいたします。

FAQ(よくある迷いを最短で解消)
Q1. 「看過」と「見過ごす」は同じ?
かなり近いです。辞書でも「見過ごすこと。見のがすこと」と説明されています。
ただし「看過」の方が硬く、是正要求が強めに響くことが多いです。
Q2. 「看過=目を通す」って間違い?
間違いとは言い切れません。国語辞典では「① ひととおり目を通すこと」が載っています。
ただ、ビジネス文書では誤読が起きやすいので、**その意味なら「確認する/目を通す」**が安全です。
Q3. 目上に「看過できません」は失礼?
失礼になり得ます。言い回しが硬く強いので、“影響”と“提案”を添えるか、柔らかい表現(「見過ごせません」「懸念があります」)に切り替えるのが無難です。
まとめ:迷ったら「看過=放置できない」、文書では“目を通す”で使わない
- 看過(基本)=見ていながら放っておく/見逃す
- 辞書によっては **「目を通す」**の意味もあるが、実務では誤解が起きやすい
- 「看過できない」は強め。事実→影響→提案のセットで“非難”に見せない
「この一文、強すぎるかな?」と迷ったら、上の比較表から温度感を選び直して、最後に提案(次の一手)まで置く。これだけで、文書の伝わり方はかなり安定します。