こんにちは。一級建築士・外壁リフォームアドバイザーの高橋です。
外壁や屋根の点検を依頼したときに、業者から「ここはケイカル板ですね」と言われて、内心ドキッとした方は多いはずです。
- ケイカル板にアスベストは入っているのかどうか
- ケイカル板はどれくらいの寿命があるのか
- ケイカル板は塗装で十分なのか、張り替えまで必要なのか
こうした不安を、業者に聞きにくいと感じる方も少なくありません。
このガイドでは、ケイカル板の役割・安全性・アスベストとの関係・メンテナンスの考え方を、専門用語をできるだけ避けながら整理します。
読み終えたあとには、「自宅はまず何を確認すべきか」「塗装と張り替えのどちらを選ぶべきか」を、自分で判断できる状態になることをゴールにしています。
そもそもケイカル板って何?軒天でどんな役割をしているのか
ケイカル板は「燃えにくく、湿気に強い板」
ケイカル板は「けい酸カルシウム板」の略称で、
- セメント系の材料
- 無機質の繊維
などを混ぜて作られた不燃性の板状建材です。
ケイカル板は次のような特徴を持つ板です。
- 燃えにくい(不燃または準不燃)
- 湿気に比較的強く、寸法変化(反り)が少ない
- ビスや釘で固定しやすく、天井や壁に使いやすい
この性能が評価されて、ケイカル板は主に以下の場所で使われています。
- 戸建て住宅の軒天(のきてん)
- 玄関ポーチの天井
- マンションの共用廊下の天井
- 一部の内装下地や耐火被覆
軒天に使われるケイカル板の役割
軒天は、屋根の裏側にあたる部分の天井です。
軒天は建物の外観を整えるだけでなく、次のような役割を持っています。
- 屋根の構造材を雨風から守る
- 屋根裏に入った鳥や害獣を防ぐ
- 延焼時に火が屋根裏にまわるのを遅らせる
この軒天にケイカル板を使うことで、雨や湿気に強く、燃えにくい天井をつくることができます。
かつての住宅では、軒天にベニヤ板(薄い木の板)が使われることもありました。
ベニヤ板の軒天は、雨漏りや結露で早く傷みやすく、剥がれや腐れが起きやすいという弱点があります。
ケイカル板は、こうしたベニヤ板の弱点を補うために、徐々に主流になってきた建材です。

【結論】: 軒天に使われているケイカル板は、家を雨や火から守る大事な防具のような存在です。見た目だけで判断せず、役割を理解したうえでメンテナンス方法を考えることが安全につながります。
多くの方が「軒天はただの飾り」と考えがちですが、軒天は構造や防火性能にも関わる部分です。ケイカル板の役割をきちんと理解すると、「どこまで修理するべきか」の判断がぐっと楽になります。この知見が、あなたの住まいを長く安全に保つ助けになれば幸いです。
アスベストとの関係と法改正:自宅は本当に大丈夫?
ケイカル板とアスベストの関係
「ケイカル板」と聞いて一番心配になるのが、アスベスト(石綿)が入っているかどうかです。
ここがポイントです。
- ケイカル板の中には、過去にアスベストを含んでいた製品も存在する
- 現在は法律でアスベストの新たな使用が禁止されているため、新しい建物のケイカル板は原則として非含有品
- ただし、築年数が古い建物や既存建物の改修では、アスベスト含有の可能性を前提にした確認が必要
アスベストは非常に細かい繊維で、吸い込むと長期的な健康被害を起こす可能性がある物質です。
そのため、アスベストを含む建材を削ったり割ったりする工事には、厳しいルールが設けられています。
築年とアスベストリスクのざっくりイメージ
細かい年号をすべて覚える必要はありません。
施主の立場で大事なのは、築年数とリスクをざっくり整理することです。
- 1980年代以前に建てられた建物
- アスベスト含有建材が使われている可能性が比較的高い
- 1990年代〜2000年代前半に建てられた建物
- 製品やメーカーによって差があるため、可能性はゼロではない
- アスベスト使用が禁止された後に建てられた建物
- 新たにアスベストを含むケイカル板は使われていないと考えられるが、調査・確認は法律上必要になる場合がある
ここで大切なのは、
「築年が古いから必ず危険」
「築年が新しいから絶対に安心」
という二択で考えないことです。
実際には、建物の図面・仕様書・建材の資料を確認しながら、専門家が「アスベスト含有建材かどうか」を判断します。

アスベスト事前調査と法律のポイント
現在は法改正により、多くの建物工事で「アスベストが含まれているかどうか」を事前に調査することが義務化されています。
アスベスト事前調査では、次のような流れで確認が進みます。
- 図面や仕様書で、使われている建材の種類を確認する
- 現場を目視して、建材の位置や状態を確認する
- 必要に応じて、建材の一部を採取して専門機関で分析する
- 結果をもとに、届出や工事方法を決定する
この調査は、大気汚染防止法や石綿障害予防規則などの法律に基づいて行われます。
細かい条文まで覚える必要はありませんが、
- 「アスベストを含む可能性がある建材に手を加えるときは、原則として事前調査が必要」
- 「調査結果に応じて、粉じんが飛ばないような工事方法や養生が義務づけられる」
という点だけ押さえておけば、判断の軸になります。
【結論】: アスベストが心配なときは、施主が自分で断定しようとしないことが一番大事です。必ず、資格を持つ調査者や経験のある業者に確認を依頼してください。
アスベストは、見た目だけでは判別できません。「多分大丈夫だろう」と工事を進めてしまい、あとから発覚してトラブルになるケースもあります。逆に、不必要に怖がって何も進められないのももったいない状況です。専門家の目と検査をうまく使うことが、安心への近道になります。

塗装で守れるケイカル板、張り替えが必要なケイカル板の見分け方
まずは「塗装で十分な状態」と「張り替えを検討すべき状態」を分けて考える
ケイカル板は、適切に塗装をしておけば長く使用できる建材です。
しかし、劣化が進むと、塗装だけでは追いつかない状態になることもあります。
ここでは、軒天に使われているケイカル板を例に、
- 塗装で守れる状態
- 張り替えを検討したほうがよい状態
を整理します。
| 症状・状態 | 見られるサインの例 | おすすめ対応の目安 |
|---|---|---|
| 表面の色あせ・ツヤがない | 色がぼんやりしている、ツヤがなくなっている | 再塗装で保護する |
| 軽いチョーキング(白い粉が付く) | 手で触ると白い粉が少し付く | 高圧洗浄+適切な下塗り+再塗装 |
| 髪の毛程度のごく細いひび | 塗膜だけにひびが入っているように見える | ひびを補修したうえで再塗装 |
| ケイカル板の端部の小さな欠け | 角がわずかに欠けているが、下地はしっかりしている | 必要に応じて部分補修+再塗装 |
| 広い範囲の割れ・層間剥離 | 板が反っている、層が剥がれているように見える | 張り替えを検討する必要が高い |
| ケイカル板自体の崩れ・ボロボロ状態 | 指で触るとポロポロ崩れる、下地が見えている | 基本的に張り替えが必要 |
| 下地の木材が腐っている・黒ずんでいる | ケイカル板を外すと、下の木材が柔らかい・黒いシミがある | 軒天全体の補修や下地交換が必要 |
この表はあくまで目安ですが、
- 表面の問題が中心なら「塗装で守れる可能性が高い」
- 板そのものや下地の傷みが進んでいる場合は「張り替えを前提に検討」
という考え方が基本になります。
※金額はあくまで相対的なイメージです。実際の費用は建物条件や地域で大きく変わります。
| 工事パターン | 内容のイメージ | 費用感のイメージ | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 軒天ケイカル板の再塗装のみ | 洗浄+下塗り+上塗り(2〜3回塗り) | 小〜中 | 板の状態が良く、主に美観と防水性を回復したい場合 |
| 部分的な補修+全体塗装 | 欠けや小さな割れを補修しつつ、全体を塗装 | 中 | 一部に傷みがあるが、板全体の交換までは不要な場合 |
| 軒天ケイカル板の全面張り替え+塗装 | 既存板の撤去+新規ケイカル板取付+仕上げ塗装 | 中〜大 | 劣化が大きい、下地の傷みが疑われる場合 |
| 軒天と合わせて下地修繕や断熱改修も実施 | 板・下地交換+必要に応じて追加工事 | 大 | 大規模なリフォームの一環として行う場合 |
【結論】: 軒天のケイカル板が崩れているように見える場合は、塗装だけで済ませず、必ず「下地の状態」まで確認してもらってください。
表面だけを塗り重ねても、下地の木材が傷んでいると、再び早期に不具合が出てしまいます。現場調査の際には、可能であれば一部をめくって下地の状態を確認してもらいましょう。ここをきちんと確認することで、将来の余計な出費を抑えられるケースが非常に多くあります。
現場調査で業者に必ず聞きたい5つの質問
現場調査のとき、ケイカル板の状態をきちんと見極めてもらうためには、施主からの質問も大切です。
おすすめの質問は次の5つです。
- 「この軒天材はケイカル板でしょうか?メーカーや品番は分かりそうですか?」
- 「見たところ、塗装で十分そうですか?張り替えが必要な部分はありますか?」
- 「アスベスト事前調査は必要になりそうですか?必要な場合の手順を教えてください。」
- 「もし張り替えをする場合、どこまでの範囲を交換したほうが良いと考えていますか?」
- 「今回の見積もりでは、塗装・張り替え・足場などの費用は、どの項目に分かれて記載されていますか?」
この5つを聞くだけでも、業者の説明力や誠実さがかなり見えてきます。
説明が分かりにくい、質問をはぐらかす、見積もりの内訳を示してくれない、という場合は、相見積もりを検討するサインと考えてよいでしょう。
よくある質問(FAQ)でアスベスト・費用・業者選びの不安を一つずつ解消
Q1. ケイカル板なら、必ずアスベストが入っていますか?
A. いいえ。ケイカル板のすべてにアスベストが含まれているわけではありません。
ケイカル板には、アスベストを含む製品も、含まない製品も存在します。
築年や製造時期、製品の種類によって異なるため、「ケイカル板=必ずアスベスト」というわけではありません。
ただし、アスベストの有無は見た目では判断できません。
建物の図面・仕様書・建材の資料をもとに、専門家が確認する必要があります。
Q2. アスベストの検査だけ依頼することはできますか?
A. 多くの場合、アスベスト事前調査のみを請け負う専門会社や、調査資格を持つ事業者に依頼することが可能です。
リフォーム工事とは別に、中立的な立場の調査会社に依頼する選択もあります。
費用は建材の種類や採取箇所の数によって変わりますが、
「ケイカル板がアスベスト含有かどうかをはっきりさせたい」という不安が強い場合、
先に調査をしてから工事範囲を決めるほうが、結果的に安心度が高いと感じる施主が多いです。
Q3. 小さな補修でもアスベスト調査は必要ですか?
A. アスベスト含有の可能性がある建材を削る・壊す・撤去する場合は、規模にかかわらず事前調査や適切な工法が求められます。
たとえ小さな範囲であっても、
- ケイカル板を切断する
- 部分撤去を行う
といった作業がある場合は、アスベストの有無を前提に考える必要があります。
不安がある場合は、「この作業では粉じんは出ますか?アスベストの可能性は確認していますか?」と必ず聞いてください。
Q4. 一括見積サイトを使って業者探しをしても大丈夫でしょうか?
A. 一括見積サイト自体は、相場感をつかむ手段のひとつとして有効です。
ただし、アスベストやケイカル板のような専門性の高いテーマでは、「アスベスト事前調査の実績があるかどうか」「説明が丁寧かどうか」を重視してください。
- 現場調査のときに、築年・建材・アスベストリスクについて自分から触れてくれるか
- 質問に対して、分かりやすく、資料も交えて説明してくれるか
こうした点を見ながら、一括見積サイトで見つけた業者かどうかにかかわらず、信頼できる相手かどうかを判断するとよいです。
Q5. DIYで軒天のケイカル板を触っても大丈夫ですか?
A. アスベストの可能性が完全に否定できない場合、DIYでケイカル板を削る・切る・壊すことはおすすめできません。
- ケイカル板の表面を軽く掃除する程度ならまだしも、
- 削る、穴を開ける、割ってしまう
といった行為は、アスベスト含有建材だった場合に粉じんを吸い込むリスクがあります。
健康面と法令面の両方の観点から、ケイカル板をいじる工事は、必ず専門業者に相談することをおすすめします。
【結論】: 「ちょっとだけだから」と考えてケイカル板をDIYで加工することは避けてください。
実際の現場では、「小さな開口を自分で開けてしまった」「壊してから不安になった」という相談が少なくありません。あとから調査をしても、破壊してしまった部分は元に戻せません。迷ったときは、必ず工事前にプロへ相談することが安全な選択です。
まとめ:この記事を読んだ今日からできる、3つの次の一歩
ここまで、ケイカル板と軒天について、
- ケイカル板の正体と役割
- ケイカル板とアスベストの関係
- 塗装で守れる状態と張り替えが必要な状態
- 調査・業者選びのポイント
を整理してきました。
最後に、今日からできる3つのステップをまとめます。
- 図面と築年を確認する
- 可能であれば、設計図書や仕様書で軒天材の種類を確認する
- 建物の築年を把握して、「アスベストリスクのざっくり位置」をつかむ
- ケイカル板の状態をチェックする
- 色あせ・チョーキング・ひび・欠けなどを目視で確認する
- 「表だけの問題か」「板そのものが崩れていないか」という視点で見る
- 専門家に相談し、必要なら調査と見積もりを依頼する
- 不安があれば、アスベスト事前調査の経験がある業者に相談する
- 塗装・張り替え・足場などの内訳が分かる見積もりをもらう
ケイカル板やアスベストという言葉を聞くと、不安だけが先に立ちやすくなります。
ただ、正しい情報と専門家のサポートがあれば、「何となく怖い家」から「きちんと手入れの方針が決まった家」へと変えていくことができます。
あなたの住まいを、家族が安心して過ごせる場所に保つために、
今日できる一歩から、少しずつ進めていきましょう。
