おでん出汁の「黄金比」、調べれば調べるほど「10:1:1」「15:1:1」と色々な数字が出てきて、一体どれを信じれば良いのか分なくなっていませんか?
ご安心ください。その答えは、あなただけの「決定版」を見つけるための”考え方”を学ぶことにあります。目指すべきは、だしの風味を最大限に活かす関西風の黄金比「だし汁 13:薄口醤油 1:みりん 1」を基本とすることです。
この記事は、単なるレシピの紹介ではありません。様々な黄金比の”なぜ”を解明し、ご家庭のおでんを「料亭の味」に変えるための、最初で最後の本格おでん出汁ガイドです。
読み終える頃には、レシピサイトを渡り歩く日々は終わり、自信を持って「我が家の味」を作れるようになっています。
なぜ混乱する?関東風と関西風、2つの「黄金比」が存在する理由
私の料理教室でも「先生、レシピサイトによって黄金比が違うのはなぜですか?」というご質問を本当によく受けます。この混乱の原因は至ってシンプルで、日本には大きく分けて関東風おでんと関西風おでんという、対極のスタイルが存在するからです。
両者は色も味も、そして使う調味料も全く異なります。あなたが目指す「上品でだしの香りが立つお店の味」がどちらなのか、まずは下の比較表で確認してみましょう
| 比較項目 | 関東風おでん | 関西風おでん |
|---|---|---|
| 味の特徴 | 醤油の風味が強く、甘辛くしっかりとした味 | だしの風味が主役で、素材の味を活かす上品な味 |
| 色 | 濃い醤油色 | 澄んだ琥珀色 |
| ベースのだし | 鰹節が中心 | 昆布が中心 |
| 使う醤油 | 濃口醤油 | 薄口醤油 |
| 黄金比の目安 | だし 8:濃口醤油 1:みりん 1 | だし 13:薄口醤油 1:みりん 1 |
ご覧の通り、恵子さんが目指している「料亭のような上品な味」は、まさしく関西風おでんの特長と一致します。この方向性さえ定まれば、もう情報に振り回されることはありません。
これが決定版。家庭で目指すべき関西風「新・黄金比」の考え方
目指す方向性が関西風おでんに定まったところで、この記事が決定版として推奨する黄金比をお伝えします。それは「だし汁 13:薄口醤油 1:みりん 1」です。
この比率は、だしの繊細な風味を損なうことなく、家庭でも満足できるしっかりとした旨味を感じられる、絶妙なバランスです。
ここで一つ、非常に大切なことをお伝えします。上品な関西風おでんを作る上で、薄口醤油は必須要素であり、ご家庭にある濃口醤油では決して代用できません。 なぜなら、薄口醤油は色が薄い一方で、塩分濃度は濃口醤油より高いという特性を持っているからです。濃口醤油で同じ塩分にしようとすると、色が黒くなり、だしの風味が醤油の風味に負けてしまい、全く別の料理になってしまいます。

比率より10倍重要。プロは必ず守る「だしの命」を引き出す全手順
黄金比はあくまで料理の「設計図」にすぎません。本当に大切なのは、その設計図を活かすための「丁寧な施工」、つまりだしの引き方と具材の下ごしらえです。
おでん出汁の黄金比の真価は、質の高い昆布と鰹のだしがあって初めて発揮されます。 どんなに正確な比率でも、ベースのだしが凡庸では、決して感動する味にはなりません。
【結論】: 昆布は絶対にグラグラ煮立たせないでください。60℃のお湯で1時間、じっくり旨味を抽出するのが理想です。
なぜなら、昆布の表面にはぬめり成分があり、高温で煮出すと、そのぬめりがだしに溶け出して風味を損なうからです。私の教室の生徒さんも、この一点を守るだけで「今までのだしは何だったのか」と驚かれます。だしの味は、この最初の工程で9割決まると言っても過言ではありません。
以下に、プロが必ず守る、だしの命を引き出す手順をまとめました。
✅ だし取りの重要ポイント・チェックリスト
- 昆布の表面は固く絞った布巾でさっと拭く(白い粉は旨味なので落とさない)
- 昆布は必ず水から鍋に入れ、最低30分はおく
- 鍋は必ず弱火にかけ、ゆっくり温度を上げる
- 鍋の底から小さな泡がフツフツと出始めたら、沸騰する直前に昆布を取り出す
- 一度必ず火を止め、鰹節をそっと入れる
- 鰹節が自然に沈むまで1〜2分待ち、アクが出たら取る
- ザルにキッチンペーパーを敷き、決して絞らずに自然な重みで静かに濾す
さらに、この最高のだしを守り、具材の味を最大限に引き出すために、丁寧な下ごしらえは、だしの風味を保護し、味の染み込みを良くする相乗効果があります。
- 大根: 厚めに皮をむいて面取りし、米のとぎ汁で15分ほど下茹でする。苦味が抜け、味が染みやすくなります。
- 練り物(さつま揚げなど): ザルに乗せて熱湯をさっと回しかける(油抜き)。余分な油が落ち、だしが濁るのを防ぎます。
- こんにゃく: 格子状に切り込みを入れ、塩で揉んでから下茹でする。臭みが取れ、味が染み込みやすくなります。
このひと手間が、仕上がりに天と地ほどの差を生みます。
よくあるご質問(FAQ)
Q. どうしても時間がない場合、白だしで代用できますか?
A. はい、代用は可能です。その際は、製品に表示されている希釈倍率を参考にしつつ、薄口醤油とみりんを少し加えると、味に深みが出ます。ただし、やはり本格的なだしの風味には及びませんので、「ここぞ」という日には、ぜひご自身でだしを引いてみてください。
Q. 味が薄いと感じた時、何を足せば良いですか?
A. その場合は、醤油ではなく「塩」をほんの少しずつ加えてください。塩には、全体の味の輪郭をはっきりとさせ、引き締める効果があります。醤油を足すと、色も風味も濃くなりすぎてしまい、関西風の上品さが失われてしまいます。
Q. 残ったおでん出汁の活用法はありますか?
A. もちろんです。具材の旨味が溶け出した最高のだしですので、捨ててはもったいないです。翌日、ご飯と溶き卵を加えて雑炊にしたり、カレーうどんの出汁にしたりするのがおすすめです。
まとめ: 黄金比の先にある「我が家の味」へ
ここまで、おでん出汁の黄金比に関する混乱を解きほぐし、プロの味を再現するための具体的な方法をお伝えしてきました。
おでん出汁の美味しさを決めるのは、数字の暗記ではありません。
- 目指す方向性として「関西風」を定めること。
- その要である「だしの質」を最大限に高めること。
- 丁寧な「下ごしらえ」で、だしの美味しさを守り抜くこと。
この3つの理(ことわり)さえ押さえれば、もうレシピサイトを渡り歩く必要はありません。この記事で紹介した「だし13:薄口醤油1:みりん1」を基本に、あとはご家族の好みに合わせて「もう少しみりんを増やしてみようか」などと微調整するだけです。
あなただけの「黄金比」を見つける旅を、ぜひ楽しんでください。
今年のおでんで、一番最初に入れたい具材は何ですか?ぜひコメントで教えてください!