「取引先にお願いメールを書いていたら、“烏滸がましいお願いですが…”と打ってしまった。そもそも漢字は合ってる? 失礼? それとも丁寧?」——この手の焦り、すごく多いです。
結論から言うと、「おこがましい」は“へりくだりのクッション”として便利ですが、**意味と焦点(どこを恐縮しているか)**を外すと、逆に刺さります。
「おこがましい」の意味(要点は2つ)
辞書では、主に次の2つの意味で説明されます。
身分不相応だ。さしでがましい。また、ばかばかしい。
出典: 「痴がましい」(コトバンク) – デジタル大辞泉ほか
- 意味①:身分不相応/立場に見合わない(=分をわきまえない)
- 意味②:ばかばかしい/おろかだ(=筋が悪い・見苦しい感じ)
ビジネスでクッションとして使われるのは、ほぼ 意味① の方です。
いちばん多い落とし穴:「烏滸がましい」表記はどう扱う?
検索キーワードとしては「烏滸がましい」が強い一方、辞書系では**「痴がましい」表記を立て、烏滸を誤記扱いする**説明が見られます。
実務的な結論(メールで困らない結論)
- 社外・フォーマル文書 → ひらがな「おこがましい」推奨(表記揺れ事故を避ける)
- 社内・カジュアル → ひらがなでも漢字でもOKだが、迷うならひらがなで統一
「漢字が合ってるか不安」な時点で、ひらがなに逃がすのが一番安全です。
どんな時に「おこがましい」を使うと“きれい”に効く?
ポイントは、「おこがましい」が謝っているのは 相手の負担ではなく、**自分の立場(分不相応)**だということ。
- 目上・取引先に“意見”や“提案”をする
- 経験が浅いのに専門領域へ踏み込む
- 本来こちらから言う立場ではないことを言う
似た言葉との違いも含めると、dodaの整理がわかりやすいです(「差し出がましい=相手領域への踏み込み」「おこがましい=自分の立場との不釣り合い」)。
すぐ使える例文(そのままコピペOK)
意見・提案(“分不相応”を和らげる)
- おこがましいかもしれませんが、一点だけ提案がございます。
- おこがましいお願いではございますが、ご検討いただけますと幸いです。
質問・確認(出しゃばり感を抑える)
- おこがましい確認で恐縮ですが、納期は◯日で相違ないでしょうか。
【結論】: 「おこがましい」は“万能の丁寧語”ではなく、“立場のへりくだり”です。
なぜなら、お願いの負担を詫びたい場面で「おこがましい」を使うと、論点がズレて「そこじゃない感」が出やすいからです。負担への配慮なら「恐れ入りますが」「お手数ですが」に任せると文章が締まります。
逆に、使うと危ないパターン(刺さる/嫌味に見える)
パターンA:断り文で使う(相手を責めているように見える)
- ❌「そのご依頼はおこがましいので…」
→ 相手の依頼を“身の程知らず”と断じる響きが出ます。
パターンB:連発する(自信がない・芝居っぽい)
dodaでも「多用は避ける」趣旨が明確に書かれています。
1通のメールで1回までが目安です。
似ている言葉との違い(使い分けが一発でわかる)
| 表現 | へりくだる焦点 | 主なニュアンス | 向く場面 | NGになりやすい場面 |
|---|---|---|---|---|
| おこがましい | 自分の立場・力量 | 分不相応/身の程 | 目上に提案・意見 | 相手を評価・断罪する文脈 |
| 差し出がましい | 相手の領域 | でしゃばり/余計なお世話 | 口出し・助言の前置き | 相手が歓迎している助言に“わざとらしく”なる |
| 僭越ながら | 立場を越える行為 | より改まったへりくだり | 式辞・挨拶・代表発言 | 軽い社内連絡だと大げさ |
| 厚かましい | 欲求の強さ | 図々しい(否定が強い) | 自分を戒める独白 | クッション用途(丁寧にしたい時)には不向き |
※「差し出がましい/おこがましい/僭越ながら」の焦点の違いは、dodaの解説が実務上かなり使えます。
7. “この場面、どれを選ぶ?”判断フロー

8. よくある質問(FAQ)
Q1. 読み方は?
おこがましいです。
Q2. 「おこがましいお願いですが」は失礼?
言い方次第で失礼ではありません。ただし「お願い=相手の負担」への配慮なら、**「恐れ入りますが」「お手数ですが」**の方がズレません(“立場”ではなく“負担”を詫びられるため)。
Q3. 目上には「僭越ながら」の方がいい?
より改まった場(挨拶、会議で代表して発言)なら「僭越ながら」が合いやすい、という整理が一般的です。
[著者情報]
木村 里奈(ビジネス文章コーチ)
秘書・営業企画を経て、社外メール/提案書の文章指導を支援。
スタンス: 「丁寧=長文」ではなく、「相手が読みやすい=配慮」という考え方で、短く正確に整えるのが得意。