著者: K. Yoshikawa / 音楽ジャーナリスト
10年以上にわたり邦楽ロックシーンを取材し、数々のバンドのインタビューやアルバムレビューを担当。ONE OK ROCKもデビュー初期からその動向を追い続けている。
ONE OK ROCKの長年のファンであるあなたなら、リーダーToruの存在がいかに大きいかを、きっとご存知でしょう。しかし、彼の本当の凄さは、これまであまり多くは語られてきませんでした。
Toruは単なるバンドの創設者ではありません。ONE OK ROCKという巨大なプロジェクトのサウンドを設計し、その進化に合わせて設計図を更新し続ける「静かなる建築家」なのです。
この記事では、点在するインタビューや過去の事実を一つの物語として繋ぎ合わせ、Toruのリーダーシップ、音楽性の進化、そしてプライベートの充実がどのように結びついているのかを解き明かしていきます。読み終える頃には、あなたが抱くToruへのリスペクトは、さらに深いものになっているはずです。
原点にして核心。Takaの才能を見出したプロデューサーとしての慧眼
私が取材現場でよく受ける質問の一つに、「ToruはTakaの陰に隠れていないか?」というものがあります。その気持ちはよく分かります。しかし、その質問の裏には「Toruにしかない価値を、もっとはっきりと言語化してほしい」というファンの皆さんの願いが隠れていることも、私は知っています。
その答えの原点は、あまりにも有名なあの結成秘話にあります。
ToruとTakaの関係性は、単なる友人やバンドメンバーという言葉だけでは語れません。その本質は、ToruがTakaの才能を「発見」し、その才能を世界に届けるために全てを賭けると決めた「信頼」から始まっています。
先輩であったにも関わらず、Takaをバンドに誘うために土下座までしたというエピソード。これは単なる美談ではなく、Toruが持つプロデューサーとしての才能が、最も初期に、そして最も純粋な形で現れた瞬間だったのです。彼はその時から、自分が前に出ることよりも、「ONE OK ROCKというプロジェクトを成功させる」という大きな視点で物事を捉えていました。
しかし、彼の功績は決して過去の伝説だけではありません。このプロデューサーとしての視点こそが、現在進行形で進化し続けるONE OK ROCKのサウンドの核となっているのです。
ギタリストから「サウンドの設計者」へ。Toruが描くONE OK ROCKの音像
ONE OK ROCKのサウンドは、アルバムを重ねるごとに劇的にスケール感を増してきました。その中心にいるのが、ギタリストという役割から「サウンドの設計者」へと進化したToruの存在です。
Toruの役割は、近年の作品、特にアルバム「Ambitions」以降、バンド全体のサウンドスケープを構築する音楽プロデュースの領域へと大きく深化しています。 彼のギターはもはや、単にリフを弾くための楽器ではありません。楽曲の骨格を組み立て、Takaの歌が最も映える空間を作り出し、RyotaとTomoyaのリズム隊が躍動する土台を設計するための「筆」なのです。
【結論】: ONE OK ROCKの楽曲を聴く際は、ギターの音だけでなく「音と音の隙間(空間)」に注目してみてください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、Toruのサウンド設計の神髄は、音を重ねることよりも、むしろ「引き算」にあるからです。どの音を、どのタイミングで、どのくらいの音量で鳴らすか。その絶妙なコントロールこそが、ONE OK ROCKの楽曲に世界基準のスケール感を与えているのです。この知見が、あなたの音楽体験の助けになれば幸いです。
言葉より音で示す「静かなるリーダーシップ」と、その根幹にあるもの
Toruのリーダーシップは、言葉でメンバーを引っ張るタイプのものではありません。Toruが体現するリーダーシップとは、最高の音楽を生み出すための環境を黙って整え、メンバー間の意見を調整し、バンドという船が常に正しい方向へ進むよう舵を取る、まさに「静かなる屋台骨」です。
この揺るぎない安定感は、彼のプライベートの充実と無関係ではないでしょう。2021年に発表された、女優・大政絢さんとの結婚。Toruと大政絢さんのパートナーシップは、彼の人生に確固たる基盤をもたらし、その精神的な安定が、より創造的な音楽活動へと彼を向かわせる好影響を与えていると見るのが自然です。
公私ともに充実した彼の人間的な深みが、ONE OK ROCKの音楽にさらなる奥行きを与えているのです。
FAQ|もっと知りたい、Toruの素顔
ここでは、あなたがさらにToruという人物を深く知るための、よくある質問にお答えします。
Q1: 最近メインで使っているギターは何ですか?
A1: 近年はPRS(ポール・リード・スミス)社のギターをメインに使用している姿が多く見られます。デビュー当初のギブソン・レスポールから始まり、フェンダー社のストラトキャスターなど、求めるサウンドに応じて様々なギターを使い分けてきましたが、現在のPRSは多彩な音作りと安定したプレイアビリティが、彼の「サウンド設計者」としての役割を支えていると言えるでしょう。
Q2: 作曲のクレジットはTakaとの共作が多いですが、役割分担はどうなっていますか?
A2: 一般的に、メロディラインをTakaが、楽曲の骨格となるトラック(伴奏)制作をToruが主導するケースが多いようです。もちろん楽曲によりますが、Takaという最高のメロディメーカーのアイデアを、Toruが世界レベルのサウンドにまで構築していく、という関係性が彼らの作曲スタイルの基本にあります。
Q3: メンバーとはプライベートでどんな関係ですか?
A3: 長い年月を共に過ごしてきた、まさに「家族以上」の関係です。特にTakaとは、プライベートでも頻繁に連絡を取り合う仲。他のメンバーとも、音楽の話だけでなく、お互いの人生について語り合える深い信頼関係で結ばれています。
まとめ:ONE OK ROCKの「静かなる建築家」への尽きないリスペクト
この記事でお伝えしてきたことを、改めて振り返ってみましょう。
- Toruの原点は、Takaの才能を見出したプロデューサーとしての慧眼にあること。
- 彼はギタリストから、バンド全体の音をデザインする「サウンドの設計者」へと進化したこと。
- その「静かなるリーダーシップ」と音楽性は、プライベートの充実にも支えられていること。
Toruは、Takaという稀代のボーカリストが立つ舞台を設計し、バンドの進化に合わせてその設計図を更新し続ける、ONE OK ROCKの「静かなる建築家」です。
これからのライブや楽曲では、ぜひToruがデザインした「サウンド全体」に耳を傾けてみてください。Takaの歌声はもちろん、それを支えるギターの音色、ベースのうねり、ドラムの一打一打が、いかに計算され尽くした場所に配置されているか。きっと、新たな発見があるはずです。
[参考文献リスト]
この記事を執筆するにあたり、以下のメディアや情報を参考にしました。
- rockin’on.com 掲載の過去のインタビュー記事
- 音楽ナタリー 掲載のライブレポート及びニュース記事
- ONE OK ROCK 公式ウェブサイト
- Toru 公式Instagramアカウント