「三角比までは何とかついていけたのに、『三角比の拡張』で一気に分からなくなった。」
数学の授業や塾で、こう感じた経験がある高校生はかなり多いです。
特に、120°や135°、150°といった角度の値を「表で丸暗記してね」と言われた瞬間に、心が折れそうになりますよね。
この記事では、予備校で三角比分野を長年教えてきた立場から、
- 三角比の拡張が何をしているのかを、
- 単位円(半径1の円)というたった1枚の図を使って整理し、
- 定期テストと共通テストIAでどこまで出来ていれば安全なのかを
チェックリスト付きでハッキリさせます。
読み終えたときには、
- 「三角比の拡張」を自分の言葉と図で説明できる
- 120°・135°・150°などの値を表ではなく図から導ける
- 定期テスト用の到達ラインと、共通テスト用の到達ラインを自分で確認できる
この状態になっていることをゴールにします。
「三角比の拡張」でみんながつまずくポイントと、その正体
まず最初に、三角比の拡張という単元で、なぜ多くの高校生がつまずくのかを整理します。
三角比の拡張でよくある「あるある」
三角比の拡張に入ったタイミングで、次のようなことが起こりがちです。
- 授業でいきなり
「120°、135°、150°のsin・cos・tanの値はこれです。覚えてください。」
と表だけ渡される。 - 「象限」や「単位円」という言葉が出てくるが、
何のために出てきたのかが分からない。 - 90°を超えた瞬間に、「直角三角形が描けないからイメージが消える。」
ここで多くの生徒が、
「また新しいものを大量に暗記しなきゃいけないのか…」
と感じてしまいます。
しかし、三角比の拡張がやっていることは、実はとてもシンプルです。
- これまで「直角三角形」の中で定義していた三角比(sin・cos・tan)を、
- 単位円の上の点の座標という形に“言い換え”て、
- 90°より大きい角度にまで意味を広げる。
つまり「まったく新しいルールを覚える」話ではなく、
既に知っている三角比を、どこまで広げて使えるようにするか
という話です。
ここが見えてくると、三角比の拡張は一気に「意味のある単元」に変わります。
単位円1枚でつかむ「三角比の拡張」の本質
ここからが本題です。
三角比の拡張の本質は、「単位円」と「象限」の考え方にあります。
単位円で三角比を言い換える
半径1の円を、原点(0,0)を中心に描いたものを単位円と言います。
この単位円の上に、角度θに対応する点Pを考えます。
- 原点Oから点Pまで線を引いたときの角度をθとする。
- 点Pの座標を (x, y) とする。
このとき、
- cosθ = x座標
- sinθ = y座標
という対応関係で、三角比を座標の言葉に置き換えることができます。
この考え方を使うことで、90°を超える角度でも、
- 点Pが単位円のどこにいるか(象限)
- そのときのx座標・y座標の符号
を考えれば、sinθ・cosθの符号や値を判断できるようになります。
象限で符号を整理する
単位円は、x軸とy軸で4つのエリア(象限)に分かれます。
- 第1象限:x > 0, y > 0
- 第2象限:x < 0, y > 0
- 第3象限:x < 0, y < 0
- 第4象限:x > 0, y < 0
先ほどの対応(cosθ = x座標、sinθ = y座標)を使うと、すぐに次の結論が出ます。
- 第1象限:sin > 0, cos > 0, tan > 0
- 第2象限:sin > 0, cos < 0, tan < 0
- 第3象限:sin < 0, cos < 0, tan > 0
- 第4象限:sin < 0, cos > 0, tan < 0
この「象限ごとの符号」をきちんと押さえると、三角比の拡張で符号ミスを大幅に減らすことができます。
120°を例に「基本角」から拡張角を作る
120°のsin・cosを、単位円を使って考えます。
120°は、第2象限にある角度で、180° − 60° という形で書けます。
このときの「60°」を基本角と呼びます。
- 60°のcos:1/2
- 60°のsin:√3/2
を知っている前提で、120°について考えます。
120°は第2象限にあるため、
- x座標(cos)は負
- y座標(sin)は正
という符号になります。
したがって、
- cos120° = −cos60° = −1/2
- sin120° = sin60° = √3/2
という形で、既に知っている60°の値から、符号だけを変えて計算できるわけです。
同じように、
- 135° = 180° − 45°(基本角45°)
- 150° = 180° − 30°(基本角30°)
という形で、三角比の拡張は「基本角+象限の符号」で考えることができます。
【結論】: 三角比の拡張に出てくる120°や135°の値は、最初から丸暗記する必要はありません。基本角(30°・45°・60°)の三角比と象限ごとの符号から、毎回作り直すつもりで練習した方が長期的には圧倒的に楽になります。
なぜなら、表で覚えた値は数週間で忘れてしまいますが、自分の手で「単位円の上を少し回転させて考える」練習をしておくと、数IIの三角関数や共通テストの図形問題まで一貫して同じイメージで解けるからです。この知見が、三角比の拡張への苦手意識を減らす助けになれば幸いです。

定期テスト・共通テストで失点しない学習ステップとチェックリスト
ここからは、三角比の拡張を「どうやって勉強すればよいか」という話に移ります。
三角比から三角比の拡張、その先の正弦定理・余弦定理、そして共通テストの図形と計量まで、実際の学習の流れは一本の線でつながっています。
学習ステップと到達目標
まずは、三角比の拡張を含む学習の全体像を一度で見渡せるように整理します。
| ステップ | やること | できるようになること | 目安時間 |
|---|---|---|---|
| Step1 | 30°・45°・60°の基本三角比の復習 | 直角三角形を使って、基本角のsin・cos・tanを自分で導ける | 1〜2時間 |
| Step2 | 単位円と象限の符号の整理 | 各象限でsin・cos・tanの符号を即答できる | 1時間 |
| Step3 | 120°・135°・150°など拡張角の値を図から導く練習 | 表を見なくても、代表的な拡張角の値を作り出せる | 2〜3時間 |
| Step4 | 三角形の面積公式(1/2ab sinC)と応用問題 | 三角比を利用して三角形の面積を求める文章題を解ける | 2〜3時間 |
| Step5 | 正弦定理・余弦定理の基本と簡単な計算問題 | 図形と計量の代表的な応用問題に対応できる | 3〜4時間 |
| Step6 | 共通テスト数学IA「図形と計量」の過去問1年分 | 共通テストの出題形式に慣れ、時間配分の感覚をつかめる | 2〜3時間 |
定期テスト用ラインと共通テスト用ライン
次に、「どこまで出来ていれば安心か」を明確にします。
| チェック項目 | 定期テストでの重要度 | 共通テストでの重要度 |
|---|---|---|
| 基本角(30°・45°・60°)の三角比を自力で導ける | 必須 | 必須 |
| 象限ごとのsin・cos・tanの符号を覚えている | かなり重要 | 必須 |
| 120°・135°・150°などの値を図から導ける | 出る学校では必須 | 必須寄り |
| 三角形の面積公式(1/2ab sinC)を使った文章題が解ける | かなり重要 | 必須 |
| 正弦定理・余弦定理の基本問題が解ける | 出る範囲なら重要 | 必須寄り |
| 共通テストの図形と計量の過去問を1年分解いた経験がある | 任意 | 安心ライン |
「共通テストで点を取りたい」という目標がある場合は、
表の「共通テストでの重要度」の「必須」「必須寄り」の項目は、最低限押さえたいラインになります。
【結論】: 三角比の拡張を勉強するときには、「定期テストで必要なライン」と「共通テストまで見据えたライン」を分けて考えると、勉強の優先順位がはっきりします。
なぜなら、すべての内容を一度に完璧にしようとすると、途中で投げ出してしまう生徒が多いからです。まずは定期テスト用のラインを固め、その後に共通テスト用として正弦定理・余弦定理や過去問に広げていく方が、精神的にも続けやすく、結果的に得点力も安定します。
三角比の拡張に関するよくある質問(FAQ)
最後に、三角比の拡張に関して生徒からよく受ける質問をまとめておきます。
Q1. 120°・135°・150°の値は、全部覚えないとダメですか?
A. 120°・135°・150°の値を「表として丸暗記する」必要はありません。
ただし、基本角と象限の符号から自分で導き出せるようになることは、定期テストでも共通テストでも非常に大切です。
- 120° → 基本角60°を第2象限に移したもの
- 135° → 基本角45°を第2象限に移したもの
- 150° → 基本角30°を第2象限に移したもの
という形で、毎回同じ手順で作れるかどうかをチェックしてください。
Q2. 三角比の拡張が分からないと、数IIの三角関数は無理ですか?
A. 三角比の拡張が全く分からない状態だと、数IIの三角関数に入ったときにかなり苦労します。
特に、次の2点は三角関数の土台になります。
- 単位円と象限のイメージ
- 「角度が増えると点が円の上をぐるっと回る」という感覚
逆に言えば、この記事で扱っているような単位円1枚で説明できるレベルまで理解できていれば、数IIの三角関数には十分ついていけます。
Q3. 共通テスト対策としては、図形と計量の過去問を何年分くらいやればいいですか?
A. まずは、1年分を丁寧に解くことをおすすめします。
- はじめの1年分は、時間を計らなくても構いません。
- 解き終わったあとに、
- どの設問で三角比の拡張が使われていたか
- どこで符号ミスや計算ミスが出たか
を必ず振り返ってください。
そのうえで、余裕があれば2〜3年分と広げていくと良いです。
重要なのは「解いた年数」よりも、「一問ごとの反省の質」です。
Q4. 三角比の拡張は、どこから勉強を始めればいいですか?
A. 三角比の拡張を新しく始める場合は、次の順番をおすすめします。
- 30°・45°・60°の三角比を、自分で直角三角形から導き直す。
- 単位円をノートに描き、各象限のsin・cos・tanの符号を整理する。
- 120°・135°・150°を、基本角から作り出す練習をする。
この3ステップを終えてから、面積公式・正弦定理・余弦定理に進むと、理解がスムーズになります。
まとめと次の一歩(CTA)
ここまで、三角比の拡張について、
- 単位円1枚で本質をつかむ方法
- 象限を使って符号を整理する考え方
- 定期テスト用ラインと共通テスト用ラインを分けた学習ステップ
を一気に見てきました。
三角比の拡張は、一度「よく分からない単元」とラベルを貼ってしまうと、
そのまま数IIの三角関数や共通テストの図形と計量まで尾を引きます。
しかし、視点を変えると、
「三角比の拡張 = 単位円の上で、いつもの三角比を少し広げてあげるだけ」
という、とてもシンプルな構造を持った単元です。
今、取ってほしい次の一歩はたった一つです。
- ノートの1ページを使って、自分専用の単位円を描いてみてください。
- その単位円の上に
- 30°・45°・60°
- 120°・135°・150°
の点を自分で刻み、sin・cosの符号と値を書き込んでみてください。
その1ページが、これからの三角比・三角関数・図形と計量の強力な味方になってくれます。
参考文献・出典
- 高等学校数学I 教科書「図形と計量」該当章
- 共通テスト数学IA 過去問題(図形と計量)各年度
- 一般的な高校数学問題集・解説書(図形と計量・三角比・三角関数分野)