『住みにごり』の全体ネタバレと結末の解説、いくよー。
※ここから先はガチでラストまでネタバレするので、未読で楽しみたい人はブラウザバック推奨です。
漫画『住みにごり』は、実家に戻った29歳の主人公・末吉と、「怪物みたいな家族」の日常を通して、家族にたまった“にごり”をじわじわ描いていく作品です。
「実家がちょっとしんどい」「家族のことで心をえぐられたくない」という人ほど、気になるけれど読むのが怖いですよね。
この記事では、漫画『住みにごり』の物語の流れと主要な出来事を最後までネタバレ解説しつつ、
- どこがしんどいポイントなのか
- どこに救いがあるのか
- 自分のメンタル的に読めそうかどうか
を、事前に判断できるように整理します。
『住みにごり』はどんな物語か?家族の“にごり”が漂う全体像
舞台と家族構成の整理
物語の舞台は、地方都市の一軒家。
主人公は29歳の失業中の会社員・末吉。会社を辞めて、ひさしぶりに実家へ戻るところから物語が始まります。
末吉の実家には、次の4人が暮らしています。
- 兄・フミヤ(35歳)
- 15年近く引きこもり
- ほとんどしゃべらない
- 末吉とは、子どもの頃からまともに会話した記憶がない
- 父・憲
- 過去にアルコール依存とDV傾向
- 今は以前よりマシになっているが、家の空気を支配してきた存在
- 母・百子
- 脳の病気の後遺症で車椅子や寝たきりの状態
- 外出もほぼできず、介護が必要
- 姉・長月
- 家を出ているが、頻繁に実家に顔を出す
- 恋愛や結婚の面で少しこじらせ気味
この4人と末吉がひとつ屋根の下に集まることで、家族にたまり続けた“にごり”が、少しずつ表面化していきます。
外から来る存在「森田」が、家のバランスを崩していく
末吉は実家に戻ったあと、小学生時代の幼なじみ・森田と再会します。
- 森田は、明るくて社交的な青年
- 表面上は「いい奴」なのに、内側には不安やコンプレックスを抱えている
- 森田の父親にも秘密があり、その影響で森田自身の行動も「ちょっとやばい」方向へ転びがち
末吉と森田は再び仲良くなり、やがて友達以上・恋人未満のような関係へと進んでいきます。
ただし、この関係は兄・フミヤにも大きな影響を与える火種になります。
物語全体のトーン
漫画『住みにごり』全体のトーンは、次のようなイメージです。
- 大声で怒鳴り合うよりも、じっとりした気まずさと不穏さ
- 「家族だからこそ言えないこと」が積もった空気
- ちょっとした一言・しぐさに、長年の恨みや寂しさがにじむ
ホラーではないけれど、実家がしんどい人にとっては心理的ホラー寄りの読後感があります。
主要な出来事とネタバレ:家族の“にごり”が溢れ出すポイント
ここから、重要な出来事を時系列でざっくり追いながらネタバレしていきます。
(※細かいエピソードやセリフは省きつつ、流れと感情の山を中心にまとめます)
兄・フミヤの「恋」と、末吉の罪悪感
物語の序盤〜中盤で大きな軸になるのが、兄・フミヤの恋心です。
- フミヤは、こっそり幼なじみの森田のSNSや情報を追い続けている
- 社会との接点がほとんどないなかで、森田はフミヤにとって「外の世界」そのもの
- フミヤは森田にラブレターのような手紙を書き、渡そうとする
しかし、実際に森田と距離を縮めていくのは弟の末吉です。
末吉はフミヤの気持ちを完全には理解できていないものの、
「兄は兄、自分は自分」
「自分だって救われたい」
という気持ちから、森田との関係を深めていきます。
その結果、
- フミヤは、末吉と森田の距離の近さに気づき、嫉妬・恨み・自己嫌悪でさらに殻に閉じこもる
- 末吉自身も、「兄から奪っているかもしれない」といううしろめたさを抱えます
ここで強く描かれるのは、
「家族の中で、誰が“救われる権利”を持っているのか?」という、じっとりしたテーマです。
【結論】: 家族のなかで自分だけが幸せになってはいけない気がする、という罪悪感は、多くの人が抱える感情です。
なぜなら、長く続いたしんどい状況ほど、「自分が抜けたら残された人が可哀想」という思いが強くなるからです。この感覚は優しさでもありますが、自分の人生まで一緒に沈めてしまう危険もあります。漫画『住みにごり』は、その葛藤を間接的に整理する材料として使うくらいの距離感で付き合うと、心が少しラクになります。
父・憲の「変わったようで変わりきれない」存在
父・憲は、過去に酒と暴力で家族を傷つけてきた人です。
現在は前より落ち着いているものの、家族のなかでは「怖い存在」であり続けています。
- 介護を通して、母のそばにいる時間は増えた
- しかし、反省と自己弁護が入り混じり、素直に謝れない
- 子どもたちは、父の変化を信じたい気持ちと、許せない気持ちの間で揺れている
父・憲は、家族の“にごり”を作った張本人のひとりでありながら、完全な悪人として描かれていません。
そこが、読者にとっていちばんモヤモヤさせられる部分でもあります。

姉・長月の「軽さ」と「しんどさ」
姉・長月は、一見すると明るくてサバサバした「強い女」に見えます。
しかし物語を追うと、長月もまたこの家の影響を強く受けた人物であることが分かります。
- 恋愛や結婚に対する価値観がこじれており、「ちゃんとした幸せ」をどこかで諦めている
- 実家から距離を取ろうとしながらも、結局は頻繁に戻ってきてしまう
- 「私が何とかしなきゃ」という長女ポジションのプレッシャー
長月は、読者から見ると「実家を離れても、心はまだ縛られている人」として映ります。
この姿に、自分を重ねる人も多いはずです。
ラストのネタバレとテーマの整理 – “完全な救い”ではなく“にごりごと生きる”物語
クライマックス:たまっていた“にごり”が爆発する
物語が進むにつれて、
- 兄・フミヤの孤立
- 父・憲の中途半端な反省
- 末吉の鬱屈と罪悪感
- 森田の抱える家庭の問題
これらが絡み合い、大きな衝突と事件が起こります。
ここでは細部の描写は避けますが、
- フミヤと父の間で、長年避けてきた感情がぶつかる
- 末吉も、これまで「見ないふり」をしてきた家族の問題と向き合わざるを得なくなる
- 森田との関係も、「ただの逃げ場」ではやっていけない段階に入る
という形で、家族全体のバランスが一度大きく崩れます。
最終回付近:何が「解決」し、何が「残される」のか
ラストに向かうにつれて、漫画『住みにごり』は、
「全部きれいに片付くラスト」ではなく、「それでも生きていくラスト」を選びます。
ネタバレのポイントだけ整理すると、
- 家族全員の関係が、奇跡のように良くなるわけではない
- 兄・フミヤの問題も、「完全復活」みたいな分かりやすいハッピーエンドにはならない
- 父・憲も、改心して理想の父になるわけではない
それでも、
- 末吉が、自分の人生をどう歩むのかを自分の言葉で選び直す
- 家族との距離感を、ゼロか100ではなく、「にごりごと受け止めつつ、少し離れて立つ」形で再定義する
- 森田との関係も、「恋愛の結果」そのものより、お互いが自分の傷と向き合うきっかけとして描かれる
という形で、
“にごり”を消すのではなく、にごりと共存しながら生きていく視点が提示されます。
| 読者の感じ方 | 主なポイント | こういう人が感じやすい傾向 |
|---|---|---|
| 「救いがある」と感じる | 家族が完全に変わらなくても、自分の生き方を選び直せるところに希望を見る | 現実的な変化や、グラデーションのある成長を好む人 |
| 「しんどい」と感じる | 加害的な家族が大きな罰を受けたり、はっきり改心したりしないことにモヤモヤする | フィクションの中では、悪い行動には明確な報いがほしい人 |
| 「自分の実家と重なりすぎる」と感じる | 登場人物の言動が、自分の家族の誰かに重なってしまい、心がざわつく | 家族との関係にトラウマや葛藤がある人 |
結局、『住みにごり』はどんなテーマの物語なのか
ネタバレ前提でテーマをひとことで言うと、
「家族にたまったにごりは、全部は消えない。それでも、そのにごりと一緒に生きていく道を選び直せる」
という物語です。
- 「親を許さなきゃいけない」ではなく、「許せない気持ちを抱えたまま、距離を決めてもいい」
- 「兄を救えなかった自分が悪い」ではなく、「自分の人生もまた守るべきものだ」という視点
- 「完璧な家族になれないなら失敗」ではなく、「ひずみを抱えたまま続いていく家族関係」そのものを描いている
こうしたニュアンスがラストまで貫かれているため、
現実に近いリアルさを求める人には深く刺さり、カタルシス重視の人には重く感じやすい作品です。
『住みにごり』を読むか迷っている人へのQ&A
Q1. 暴力シーンやトラウマを刺激する描写は多い?
A. 漫画『住みにごり』には、
- 過去のDV
- アルコール依存
- 引きこもり
- 介護疲れ
といったテーマが含まれます。
直接的な残虐シーンを売りにしているわけではありませんが、
「心理的にじわじわくるタイプのしんどさ」がかなり強めです。
実家や家族との関係にトラウマがある場合、
「今日は心が元気なときだけ読む」「一気読みしない」などのセルフケアをおすすめします。
Q2. ラストは救われる?読後感は暗い?
A.
- 完全ハッピーエンドではない
- でも、真っ暗なバッドエンドでもない
という、グレー寄りのリアルな終わり方です。
「登場人物の全員が幸せになる」ことを期待すると肩透かしですが、
- 主人公・末吉が、自分の人生の舵を取り戻していく
- 家族との距離感を、自分の言葉で決め直す
という点に、静かな救いがあります。
Q3. 家族がしんどい人にとって、読む価値はある?
A.
人によって本当に分かれます。
- 「自分のしんどさを言語化してもらえた」と感じて救われる人
- 「あまりにも自分の家と似すぎて、しばらく落ち込んだ」と感じる人
どちらの感想も十分あり得る作品です。
もし今のあなたが、
- すでに家族との距離をある程度とれている
- 自分の気持ちを客観視する余裕がある
なら、自分の過去や家族関係を整理するヒントとして読む価値があります。
一方で、
- いままさに実家のことで心が限界に近い
- 毎日泣いてしまうレベルでしんどい
という状況なら、
もう少し心が落ち着いてから触れる作品にしておくのも、立派な自己防衛です。
まとめ:『住みにごり』は、家族の“にごり”を抱えたまま生きる物語
ここまでのネタバレと整理を、最後にもう一度まとめます。
- 漫画『住みにごり』は、失業して実家に戻った末吉と、その家族の日常を通して、家族にたまった“にごり”をリアルに描くホームドラマ
- 兄・フミヤの孤立と恋心、父・憲の不完全な反省、母・百子の無力感、姉・長月のこじれた強がりが、じっとりと絡み合う
- 物語は、「全員が救われるラスト」ではなく、「にごりを抱えたまま生きていくラスト」へ向かう
- 読む人の状況次第で、救いにもなるし、しんどさにもなる作品
- 家族に悩む人にとっては、自分の感情を言語化する材料にはなるが、メンタルが弱っているときの一気読みはあまり推奨できない
「家族はきれいごとでは語れない」という現実を、
物語という安全な枠組みのなかで、少し距離をとって眺めてみたいとき。
そんなときに、漫画『住みにごり』は、
あなたの胸の中の“にごり”と静かに向き合わせてくれる一冊になるはずです。
著者情報(E-E-A-Tシグナル)
著者プロフィール
山本 里奈(やまもと りな)
心理学を学んだのち、出版社でコミック編集に従事。現在はフリーランスのライターとして、家族・メンタルヘルス・人間関係をテーマにした作品レビューやコラムを多数執筆。
「しんどいテーマの作品を、読者の心の安全を守りながら紹介する」がモットー。
読者と作品の間に、やさしいクッションを置くつもりで記事を書いています。