「虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)」を使いたい場面って、だいたい“誰かの後ろ盾で調子に乗っている人”を見たときですよね。
ただ、ことわざ自体が少し強めの皮肉なので、文章(特にビジネス)に入れるなら、刺さりすぎない言い方とセットで使うのが安全です。
著者情報
- 筆者: 佐倉 恒一(さくら こういち)
- 肩書き: 文章講師(ビジネス文書・日本語表現)
- 専門領域: 慣用句/ことわざの用法、言い回しのトーン設計
- スタンス: 「正しさ」より先に「角が立たない伝え方」を一緒に作る派です。
虎の威を借る狐の意味
意味はシンプルで、
**「自分は強くないのに、権力者や有力者の威光を利用して威張ること」**です。
元ネタの話では、狐が虎を“利用”して、他の獣が逃げる様子を「自分が恐れられている」と虎に誤認させます。つまり「威張っている本人が強いわけではない」が核心です。
【結論】: 「虎の威を借る狐」は“相手の人格”を刺しやすいので、文章では行動の描写に寄せるのがおすすめです。
なぜなら、「あの人は狐だ」と断定すると一気に攻撃的になり、読み手が引いてしまうからです。現場でも、角が立たない人ほど「誰が悪いか」ではなく「何が起きているか」に翻訳して伝えています。
由来(戦国策)を超ざっくりで押さえる
由来は中国の古典「戦国策」にある故事で、話の筋はこの通りです。
ある日、虎が狐を捕まえる。
狐は「自分は天から遣わされた存在。食べたら天罰が下る」と言い、虎に後ろを歩かせる。
虎がついて歩くと、獣たちは一斉に逃げる。
虎は「狐が恐れられている」と思い込むが、実際は“虎が怖いだけ”

例文(そのまま使える)
※「虎の威を借る狐」は皮肉なので、口語・会話や、軽いコラムなら相性が良いです。辞書サイトにも会話例が載っています。
日常・会話
- 「先輩がいると急に強気になるの、虎の威を借る狐っぽいよね」
- 「有名人の知り合いアピールで威張るのは、虎の威を借る狐だと思う」
ビジネス(角を立てない寄せ方)
- 「権限者の名前を盾にして押し切る進め方は、反発を招きやすいので避けたいです」
- 「“後ろ盾の強さ”で結論を決めると、現場の納得感が落ちます」
※ビジネス文書でどうしてもことわざを使うなら、人物攻撃に見えない形にします。
例:
- 「虎の威を借る狐のように見えてしまい、周囲の協力を得にくくなる恐れがあります」
使い方で失敗しやすいパターン(NG例)
- ❌「彼は虎の威を借る狐だ」
→ 人格の断定に聞こえやすく、敵を作ります。 - ❌「部長は虎の威を借る狐だ」
→ 目上に使うと、引用先がどこであれ無礼になりやすいです。
安全策は、「現象」に寄せること。
「〜のように見える」「〜と思われかねない」「〜になってしまう」など、クッションを入れるだけで温度が下がります。
類語・近い表現との違い(比較表)
「虎の威を借る狐」は、“後ろ盾で威張る”のニュアンスが強いです。類語として辞書でも挙げられるものがあります。
| 表現 | 主な意味 | いちばん近い場面 | 刺さり具合 |
|---|---|---|---|
| 虎の威を借る狐 | 後ろ盾の権勢で威張る | 権力者の名前を盾に強気になる | 強め |
| 親の七光り | 親の地位や名声の恩恵 | 親のコネで得している | 中 |
| 他人の褌で相撲を取る | 他人の力・成果で自分の手柄 | 借り物で成果を主張 | 中 |
| 笠に着る | 有利な立場をいいことに強く出る | 権限を振りかざす | 中〜強 |
| 便乗する/尻馬に乗る | 流れに乗って得する(必ずしも威張らない) | 流行や権威に乗っかる | 弱〜中 |
表記の話:「借る」?「藉る」?
一般には「虎の威を借る狐」がよく使われますが、辞書によっては「虎の威を藉る狐」と表記されることがあります。
意味は同じで、どちらも「かりる」です。
- 迷ったら:媒体(辞書・教科書・社内表記)に合わせる
- SEO記事なら:検索されやすい「借る」を基本にしつつ、本文で「藉る表記もある」と触れておくのが丁寧です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 目上の人に使っていい?
基本はおすすめしません。ことわざ自体が皮肉なので、相手の立場が上がるほど失礼に寄りやすいです。使うなら「現象」に寄せた表現(例:「後ろ盾の強さで決めたように見える」)にしましょう。
Q2. 自分に使うのはアリ?
アリです。むしろ角が立ちません。
例:「虎の威を借る狐みたいにならないよう、根拠を自分の言葉で説明します」
Q3. ことわざの“核心”は結局なに?
**「恐れられているのは本人ではなく後ろ盾」**です。由来の話でも、獣が逃げた理由は虎の存在です。
まとめ(今日から迷わない一言)
- 「虎の威を借る狐」= 後ろ盾の力で威張ること
- 由来は「戦国策」の故事で、怖がられているのは狐ではなく虎
- 文章では“人物断定”を避け、現象描写+クッション言葉が安全