会議の議事録、稟議書、契約書レビューで「当該(とうがい)」が出てきて、**“結局どれを指してるの?”**と一瞬止まった経験はありませんか。
特に、上司から「この文言で問題ない?」と急に確認を振られると、言い切る根拠が欲しくなるはずです。
結論から言うと、「当該」=“今まさに話題になっている、その対象(そのもの)”を指し直す言葉です。辞書でも「今問題になっている事柄に直接関係する、その事柄」などの趣旨で説明されています。
当該の意味を「最短」でつかむ
「当該」は、文書内ですでに特定された対象を、改まった言い方で指し直すために使われます。
- くだけた言い方:この/その/本件の
- かたい言い方:当該
例:
「当該契約」=(今話題にしている)その契約
「当該部署」=(前段で特定した)その部署
まず押さえる:当該は“前に出た対象”を受ける
「当該」は、基本的に “前段に手がかりがある” ことが前提です。
いきなり「当該は〜」と単独で出るよりも、**「当該+名詞」**で使われるのが典型です(当該契約/当該規程/当該資料 など)。
例文で「何を指しているか」を読み解く
| 例文 | ここでの「当該」が指すもの | かんたん言い換え |
|---|---|---|
| 当該契約に基づき、費用を精算する。 | 前段で話題にした契約 | その契約/本契約 |
| 当該部署へ確認のうえ、回答します。 | 前段で特定された部署 | その部署/担当部署 |
| 当該条件を満たす場合に限り申請できる。 | 文中の「条件」そのもの | この条件/当該の条件(重ねても可) |
| 当該資料の最新版を添付します。 | 直前に触れた資料 | その資料/該当資料(※意味が変わる場合あり) |
「当該」と「該当」の違い:ここで迷いが消えます
ポイントは 指し方 が違うこと。
- 当該:すでに話題にしている “その対象そのもの”
- 該当:条件・基準に “当てはまる(一致する)”
辞書でも「該当」は「ある条件・資格などに当てはまる」趣旨で説明されます。
| 項目 | 当該 | 該当 |
|---|---|---|
| コアの意味 | 話題の“その対象” | 条件に“当てはまる” |
| よくある形 | 当該+名詞(当該契約) | 該当する/該当+名詞(該当者) |
| 例 | 当該社員は〜 | 条件に該当する/該当者は〜 |
「当該」と「該当」の使い分けは、ビジネス向け解説でも同趣旨で整理されています。
使いどころ:当該が“ちょうどいい”文書、避けたい文書
当該がしっくりくる場面(硬めの文書)
- 契約書・利用規約・社内規程・監査対応資料など
→ 対象をブレなく指すのが大事で、言葉の硬さが許容されます。
当該を避けたい場面(読みやすさ優先)
- 社内チャット、カジュアルなメール、共有メモ
→ 「当該」は硬く見えて、読者によっては理解コストが上がるので、置き換えた方が親切です。
“読みやすい文書”にする言い換えテンプレ
| 目的 | 言い換え候補 | 例 |
|---|---|---|
| とにかく分かりやすく | この/その | その契約、この条件 |
| 文書として丁寧に | 本件/当の/対象の | 本件契約、対象部署 |
| 契約書調のまま | 当該(維持) | 当該条項、当該サービス |
よくある誤用:「当該する」は避けるのが無難
「該当する」は自然ですが、「当該する」は一般に不自然とされ、解説記事でも “✕当該する/〇該当する” の整理が見られます。
直し方の型
- ✕ 当該する → 〇 該当する
- ✕ 当該する場合 → 〇 当該の場合/本件の場合/この場合
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 「当該」は“文中で一度特定した対象を、硬く指し直すラベル”と捉えると迷いません。
なぜなら、実務で混乱が起きるのは「当該=なんとなく“関係ある”」と曖昧に読んでしまい、指している対象をズラすときだからです。私はレビュー時、必ず「当該=直前(または前段)で名指しした名詞に戻れるか」を確認します。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。
迷ったときの1分チェック(編集者の手順)
| チェック項目 | YESなら | NOなら |
|---|---|---|
| 前段に“指す対象”が明示されている | 当該でOK | 「この/その/本件」に言い換え |
| 文書が規程・契約・監査など硬め | 当該でOK | できるだけ平易に |
| 読み手が社外・非専門も含む | なるべく言い換え | 当該でも可(注釈推奨) |

FAQ
Q1. 当該の読み方は?
とうがいです。
Q2. 「当該者」ってどういう意味?
文脈で特定された その人(関係者) を指します。法律・規程でよく出ます。
Q3. 当該はメールで使ってもいい?
禁止ではありませんが、相手が選ぶ語彙によっては硬く見えるので、社内外や関係性次第では **「本件」「その」**に置き換えた方が無難です。
まとめ
「当該」は、**“今話題にしている、その対象”**を指し直す硬い表現です。
「該当」は、条件・基準に当てはまること。
迷ったら、該当 = 条件一致/当該 = 対象の指し直し で切り分け、読み手に合わせて この/その/本件へ言い換えると、文書が一気に読みやすくなります。
[著者情報]
高橋 玲(たかはし れい)
ビジネス文書編集・リーガルライティング支援。社内規程・契約関連の文書レビューを中心に、「硬い言葉を、誤解なく、読みやすく」を方針として改善提案を行っています。
[参考文献リスト]
- 当該(とうがい)の意味 – コトバンク
- 該当(がいとう)の意味 – コトバンク
- 「当該」と「該当」の違い – マイナビニュース
- 「該当」「当該」の違いと使い分け(例文)