春秋戦国時代の地図を開くと、最初に出てくる感想はだいたい決まっています。
「国、多すぎない?」「漢字が読めない」「秦って、今のどのへん?」。
世界史講師として多くの受験生や社会人と春秋戦国時代を見てきましたが、春秋戦国時代の地図がすんなり頭に入る人はほとんどいません。
それでも、ある「見方のコツ」を押さえれば、戦国七雄と中原の位置関係は一気にスッキリします。
この記事では、次の三つをゴールにしています。
- 戦国七雄(秦・楚・斉・燕・趙・魏・韓)の「ざっくり位置」を、現代中国地図と結びつけてイメージできるようにする。
- 「中原」「黄河」「長江」などのキーワードを、地理感覚とセットで理解できるようにする。
- 歴史地図・現代地図・マンガの地図の違いを理解して、これから自分で地図を見ても混乱しないようにする。
「完璧に暗記する」必要はまったくありません。
まずは「西の秦・南の楚・真ん中の中原」という三つの軸から、春秋戦国時代の世界を一緒に整理していきましょう。
春秋戦国時代の「どこがどこ?」がこんなに分かりにくい理由
春秋戦国時代の地図は、最初から難易度ハード設定
春秋戦国時代の地図が分かりにくい理由は、大きく三つあります。
- 国の数が圧倒的に多いこと
春秋時代には、教科書に載るだけでも十数の国が登場し、実際にはもっと多くの諸侯国が存在しました。
戦国時代になってようやく戦国七雄に落ち着きますが、春秋時代と戦国時代の地図をいきなり並べると、国名の多さで頭がいっぱいになります。 - 漢字が難しくて、読めないし覚えにくいこと
「楚」「斉」「燕」「趙」「魏」「韓」など、日常生活ではあまり見ない漢字が並びます。
漢字が読めないと、地図上のラベルを視線で追うことも難しくなります。 - 作品の地図と史実の地図に微妙なズレがあること
マンガやアニメの地図は、ストーリーを分かりやすく見せるための「略図」です。
そのため、都市間の距離や国境線が、史実にもとづく歴史地図とは意図的に変えられている場合があります。
マンガの地図を「本物」と思ってから史実地図を見ると、「あれ?位置が違う?」と混乱しやすくなります。
春秋と戦国の「国の数」を一度に覚えようとすると必ず詰まる
春秋戦国時代の地図を最初から完璧に理解しようとすると、春秋時代の小国の位置まで全部覚えようとしてしまいます。
しかし、歴史ファンや受験生でさえ、春秋時代の小国をすべて正確に覚えている人は多くありません。
世界史の学習では、まず戦国七雄を軸にして位置関係を押さえ、そのあとで必要に応じて春秋時代の小国を補っていくという順番が効率的です。
「春秋戦国時代の位置関係が分からない」と感じている多くの人は、この順番が逆になっているため、最初の一歩で転んでしまっています。
キングダムの地図と史実の地図は「役割」が違う
人気作品の『キングダム』などで描かれる地図は、読者がストーリーを追いやすいように編集された舞台図です。
一方で、歴史地図は史料にもとづいて、当時の国境線や勢力範囲を再現しようとするものです。
どちらも役割が違います。
- 作品の地図:物語を楽しむための「舞台セット」
- 歴史地図:位置関係の「骨格」を確認するための地図
この二つを「正しいか・間違っているか」で見比べるとストレスがたまります。
「舞台セット」と「骨格図」をうまく使い分けることで、作品も史実も両方楽しめるようになります。
【結論】: 春秋戦国時代の学び始めでは、春秋時代の小国を全部覚える必要はありません。まずは戦国七雄と中原の位置関係だけに集中してください。
なぜなら、世界史の授業でも、春秋戦国時代の理解の土台は常に戦国七雄の勢力図から作られているからです。最初に細かい国名まで追いかけると、地図全体の「骨格」が見えなくなります。この知見が、春秋戦国時代の地図に対する苦手意識を少しでも軽くする助けになれば幸いです。
一発でつかむ!戦国七雄×現代中国地図のざっくり位置関係
ここからは、戦国七雄の位置を「西の秦・南の楚・東の斉・北東の燕・中央の韓・魏・趙」という形でざっくり押さえていきます。
同時に、現代中国の省名とも結びつけていきます。
戦国七雄を「方角+現代の省」で覚える
戦国七雄の勢力範囲は、現代中国の省ともおおよそ対応しています。
細かいズレはありますが、地理感覚をつかむには十分です。
ざっくり位置関係
- 秦(しん):西の国。現在の陝西省(せんせいしょう)を中心とする地域。
- 楚(そ):南の大国。現在の湖北省・湖南省・長江中流域を中心とする地域。
- 斉(せい):東の国。現在の山東省(さんとうしょう)のあたり。
- 燕(えん):北東の国。現在の北京周辺から遼寧省方向の地域。
- 趙(ちょう):北方の国。現在の河北省・山西省のあたり。
- 魏(ぎ):黄河中流域の国。現在の河南省北部から山西省南部あたり。
- 韓(かん):中原南側の小国。現在の河南省南部から山西・陝西の東側の一部。
中でも、春秋戦国時代の地理感覚の中心になるのが中原(ちゅうげん)です。
中原は黄河中流域と結びついた概念であり、洛陽周辺を含む政治・経済の中心地を指します。
戦国七雄と現代中国の省の対応表
| 戦国七雄の国名 | ざっくりした方角イメージ | 主な現代の省 | 一言イメージ |
|---|---|---|---|
| 秦(しん) | 西 | 陝西省 | 山と峡谷が多い西の強国 |
| 楚(そ) | 南 | 湖北省・湖南省 | 長江流域を押さえる南の大国 |
| 斉(せい) | 東 | 山東省 | 海に面した東の国 |
| 燕(えん) | 北東 | 北京周辺・遼寧省方面 | 北東の寒冷地帯の国 |
| 趙(ちょう) | 北 | 河北省・山西省 | 山と平原をまたぐ北方の国 |
| 魏(ぎ) | 中央北寄り | 河南省北部・山西省南部 | 黄河中流域を押さえる中原の一角 |
| 韓(かん) | 中央南寄り | 河南省南部 | 中原南側を押さえる小国 |
この表の「方角イメージ」と「現代の省」のセットを頭に入れておくと、歴史地図を見たときに「ああ、ここは西安のあたりか」「ここは山東半島のあたりか」という感覚を得やすくなります。
中原は黄河中流域とセットでイメージする
中原という言葉は、春秋戦国時代より前から使われている歴史的な概念です。
時代によって指す範囲は少しずつ異なりますが、春秋戦国時代を学ぶうえでは、次のようにイメージしておくと理解しやすくなります。
- 黄河が大きく曲がる中流域
- 洛陽周辺
- 韓・魏あたりが争う中心地
中原は「黄河中流域の政治・軍事の中心」という骨格で覚えておくと、細かい定義のブレに振り回されなくなります。
【結論】: 戦国七雄を覚えるときは、必ず「国名+方角+現代の省」の三点セットで覚えてください。
なぜなら、国名だけを暗記しても、地図上の位置が結びつかず、数日後にはほとんど記憶から抜け落ちるからです。「秦=西=陝西」「斉=東=山東」のように三点セットで覚えると、地図を見なくても頭の中に位置関係のラフスケッチが残ります。この習慣が、歴史を長く楽しみ続ける大きな支えになります。
戦国七雄ざっくりマップの図解指示

歴史地図・現代地図・マンガ地図を重ねて見る3ステップ
ここからは、「これから自分で地図を確認したい」というときに役立つ三つのステップを紹介します。
ステップ1:現代中国地図で基準になる都市を押さえる
最初のステップは、歴史地図ではなく現代中国の地図を見ることです。
春秋戦国時代の主要な舞台は、今の中国でいえば次のような都市や地域です。
- 西安(陝西省):秦の中心地。
- 洛陽(河南省):中原の重要都市。
- 北京周辺:燕の勢力範囲。
- 武漢(湖北省):楚の中枢に近い長江中流の都市。
- 済南や青島(山東省):斉があった東の地域。
このあたりの都市の位置だけでも、スマホの地図アプリでざっくり確認しておくと、その後の歴史地図が一気に読みやすくなります。
ステップ2:歴史地図サービスで戦国七雄の勢力範囲を確認する
次のステップは、歴史地図サービスや歴史地図集で、戦国七雄の勢力範囲をざっくり見てみることです。
オンラインの歴史地図サービスの多くは、時代ごとに国の勢力範囲を色分けして表示してくれます。
ここで大切なのは、国境線の細かい形を覚えることではなく、次の三点です。
- 秦がどれくらい西寄りか。
- 中原の韓・魏・趙がどのあたりに固まっているか。
- 長江流域の南側に楚が広がっているか。
この三点を意識して眺めるだけで、歴史地図の情報量に飲み込まれずに済みます。
ステップ3:マンガや作品の地図と見比べて「違い」を楽しむ
最後のステップでは、マンガやゲームに登場する地図と、歴史地図を見比べてみます。
このときのポイントは、「どっちが正しいか」を決めることではなく、「なぜ違う描き方をしているのか」を考えることです。
- 戦いの舞台を分かりやすくするために距離が短く描かれている。
- 登場人物の移動ルートが読みやすくなるように川の曲がり方が簡略化されている。
こうした工夫に気づくと、作品の地図を見る目が変わりますし、「史実の位置関係」と「作品のイメージ」が頭の中で自然に重なり始めます。
| 地図の種類 | 主な役割 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 現代中国地図 | 現在の地理と結びつける | スマホで見やすく、都市の位置や距離感が直感的に分かる | 春秋戦国時代の国境線は反映されていない |
| 歴史地図 | 史実の勢力図を確認する | 国境線や勢力範囲が時代ごとに分かる | 情報量が多く、初学者にはごちゃごちゃしやすい |
| マンガ・作品の地図 | ストーリーの舞台を分かりやすく見せる | 物語を追いやすく、印象に残りやすい | 史実と距離や位置が異なる場合がある |
【結論】: 春秋戦国時代の地図を見るときは、「現代地図→歴史地図→マンガ地図」の順番を守るだけで理解度が一気に上がります。
なぜなら、現代地図で大まかな位置関係をつかんでから歴史地図を見ると、情報の意味づけがしやすくなり、最後にマンガ地図を重ねることで、物語がどの地域で展開しているかを自然とイメージできるからです。この三ステップを習慣にすると、新しい作品に出会うたびに「また世界が広がった」と感じられるはずです。
3ステップフロー図の指示

春秋戦国時代の地図でよくある疑問Q&A
最後に、春秋戦国時代の地図について、学習者や読者からよく受ける質問をQ&A形式で整理します。
Q1. 春秋時代の国の数は全部覚えたほうが良いですか?
A. 春秋時代の国の数を最初から全部覚える必要はありません。
春秋戦国時代の学習では、まず戦国七雄と中原の位置関係を押さえるほうが、長期的に見て理解が安定します。
春秋時代の小国は、年表や個別テーマを深掘りしたくなったときに、少しずつ補っていけば十分です。
Q2. 中原の範囲は時代によって違うと聞きましたが、どう考えれば良いですか?
A. 春秋戦国時代の学習では、「黄河中流域と洛陽周辺を含む中心地」くらいのイメージで十分です。
確かに、中原という言葉は時代や文脈によって指す範囲が変わります。
しかし、春秋戦国時代を理解するうえでは、「黄河中流域」「政治と軍事の中心」「韓や魏が争う地域」という三つの要素を押さえておけば、実用上ほとんど困りません。
Q3. 作品ごとに地図が違っていて混乱します。どの地図を信じれば良いですか?
A. 史実の位置関係を確認したいときは歴史地図を、物語を楽しみたいときは作品の地図を使い分けてください。
マンガやアニメの地図は、読者がストーリーを追いやすいように作られた舞台図です。
地形や距離が史実どおりでないことは珍しくありません。
史実の骨格を押さえたいときは歴史地図を開き、作品世界に浸りたいときは作品地図を素直に楽しむというスタンスが、一番ストレスが少なく、長く楽しめます。
Q4. 春秋戦国時代の地図は、受験勉強にどれくらい役立ちますか?
A. 戦国七雄と大まかな位置関係を知っておくだけでも、世界史の理解は確実に深まります。
世界史の試験問題では、細かい国境線そのものを問う問題はほとんどありません。
しかし、「どの地域でどの国が争ったか」「どの方向に進出したか」という説明を読むときに、頭の中にざっくりした地図があるかどうかで理解度が大きく変わります。
【結論】: 春秋戦国時代の地図は、「試験に出るから覚える」のではなく、「物語と歴史を立体的に楽しむための道具」として付き合ってください。
なぜなら、地図を道具として使いこなす意識を持つと、新しい作品や本に出会うたびに自分の頭の中の地図がアップデートされ、学びが連続した体験になるからです。この視点が、歴史との長い付き合いを心地よいものにしてくれます。
まとめ:西の秦・南の楚・中原の韓・魏・趙・東の斉・北東の燕を頭に置いて地図を眺めてみよう
ここまで見てきたポイントを、最後にもう一度整理します。
- 春秋戦国時代の地図が分かりにくいのは、国の数の多さ・漢字の難しさ・作品地図とのズレが重なっているからであり、読者の理解力の問題ではありません。
- 戦国七雄は「西の秦・南の楚・東の斉・北東の燕・中央の韓・魏・趙」という方角イメージと、「陝西・湖北・山東・河北・河南」などの現代の省名とセットで覚えると、頭の中にラフな地図が残ります。
- 中原は「黄河中流域と洛陽周辺を含む政治・軍事の中心」として押さえておくと、細かい定義の揺れに振り回されずに済みます。
- 地図を見る順番は、「現代地図 → 歴史地図 → マンガ地図」の三ステップがもっとも混乱が少ない順番です。
- 作品の地図と史実の地図は役割が異なり、「どちらが正しいか」ではなく「どう使い分けるか」で考えると、両方を気持ちよく楽しめます。
次の一歩としてのおすすめ行動
- 手元のスマホで現代中国の地図アプリを開き、西安・洛陽・北京・武漢・済南などの位置を一度ざっと眺めてみてください。
- そのうえで、歴史地図集やオンラインの歴史地図サービスで、戦国七雄のマップを一枚だけ見てみてください。
- 最後に、お好きな春秋戦国ものの作品(たとえばキングダム)の一巻を開き、「このシーンは、さっき見た地図のどのあたりだろう?」と考えながら読み直してみてください。
きっと、同じ物語でも、地図が頭の中にあるだけで立体感がぐっと増して感じられるはずです。