送別のメッセージを書こうとして、「最後の一文、何て書けば品よく締まる?」と手が止まったことはありませんか。
または、お悔やみの文面で「軽く見えるのは嫌だけど、重すぎても違う」と悩んだり。そんなとき候補に上がりやすいのが「思いを馳せる」です。
結論から言うと、「思いを馳せる」は距離や時間を越えて、離れた人・場所・出来事に気持ちを向ける、とても丁寧で奥行きのある表現です。
この記事では、意味の芯・使える場面・言い換えの違い・そのまま使える例文まで、失礼にならない形で整理します。
結論|「思いを馳せる」は“離れた対象に心を向ける”丁寧語
「思いを馳せる」=遠く離れている人や物事を思いやる/気持ちを向ける、が中心の意味です。
ポイントは「想像する」よりも、感情が乗ること。単なる推測ではなく、「敬意」「懐かしさ」「いたわり」「追悼」などの温度を含められます。
- 距離:故郷、遠方の取引先、離れて暮らす家族
- 時間:学生時代、創業期、震災の記憶
- 状況:相手の苦労、現場の大変さ、故人の人生
「思いを馳せる」は“万能の美文”ではなく、“対象が離れている”ことが暗黙の前提になりやすい表現です(ここが誤用ポイントにもなります)。
いつ使う?|ぴったりの場面と、自然に決まるコツ
使いやすいのは、次の3パターンです。
1) 遠方・別世界の相手に配慮を示す
例:現場、被災地、海外拠点など
「その場にいない自分が、相手の状況を気にかけている」ニュアンスが作れます。
2) 過去の出来事を引き寄せて語る
例:創業期、学生時代、恩師との思い出
「回想」よりも気持ちが丁寧で、スピーチの締めに向きます。
3) 弔意・追悼の文脈で、重みを出す
例:ご遺族への配慮、故人の功績
「偲ぶ」ほど直接的に追悼へ寄せずに、控えめに心を寄せる表現として機能します(使い分けは次章で整理します)。
【結論】: 「思いを馳せる」は、“何に”を必ず具体名詞で置くと失敗しません。
なぜなら、「思いを馳せる」は上品なぶん、対象が曖昧だと“雰囲気だけ”に見えやすいからです。たとえば「当時のご苦労に思いを馳せます」「遠い現場の状況に思いを馳せます」のように、対象を一段だけ具体化すると文章が締まります。

言い換え比較|「思いを巡らす」「心を寄せる」「偲ぶ」と何が違う?
「思いを馳せる」に近い表現は多いですが、**向き先(対象)と温度(感情の強さ)**が少しずつ違います。
| 表現 | 中心ニュアンス | 得意な場面 | 目上・弔意での安全度 |
|---|---|---|---|
| 思いを馳せる | 離れた対象へ心を向ける/思いやる | スピーチ、挨拶文、配慮表現 | 高(丁寧・上品) |
| 思い巡らす | あれこれ熟考する/思案する | 検討・分析・振り返り(感情薄め) | 中(文章が硬くなる) |
| 心を寄せる | 相手に気持ちを添える/寄り添う(共感寄り) | 応援、支援、対人配慮 | 高(ただし多用注意) |
| 偲ぶ(偲び) | 過去・離れた人を慕い思う/追想 | 追悼、思い出、回想 | 高(弔意で強い) |
| 想像する | 頭の中で思い描く(感情は任意) | 説明、推測、描写 | 中(冷たく見える場合あり) |
弔意で迷ったら
- 文章を控えめにしたい:「思いを馳せる」「心を寄せる」
- 追悼をはっきり示したい:「偲ぶ」(故人・思い出が主役になる)
すぐ使える例文|ビジネス/スピーチ/弔意(テンプレ付き)
「思いを馳せる」は、文末を丁寧にすると一気に安心感が出ます。
ビジネス(メール・挨拶文)
- 遠方の現場に配慮
- 「現場のご負担に思いを馳せつつ、私どももできる限りの支援を進めてまいります。」
- 海外拠点・別部署へ
- 「現地の状況に思いを馳せながら、連携に不足がないよう確認いたします。」
- 相手の苦労を労う
- 「この数週間のご尽力に思いを馳せ、心より敬意を申し上げます。」
スピーチ(送別・式辞)
- 送別
- 「共に過ごした日々に思いを馳せると、感謝の気持ちがあふれてまいります。」
- 創業・周年
- 「創業期の挑戦に思いを馳せるたび、今の環境が当たり前でないと気づかされます。」
- 卒業・節目
- 「入学当初の不安に思いを馳せれば、ここまで歩んだ皆さんの成長が本当に頼もしく感じられます。」
弔意(お悔やみ・追悼)
- ご遺族へ(控えめ)
- 「ご心痛いかばかりかと拝察し、日々のご負担に思いを馳せております。」
- 故人へ(丁寧)
- 「在りし日のお姿に思いを馳せ、謹んで哀悼の意を表します。」
- 会社・団体として
- 「ご功績に思いを馳せつつ、謹んでご冥福をお祈り申し上げます。」
よくある誤用(NG例)|“近すぎる対象”だと不自然になりやすい
「思いを馳せる」は便利ですが、次は避けるのが無難です。
NG1:目の前の出来事に使う
- ❌「今日の会議に思いを馳せます」
→ 会議は“これから・目の前”なので、**「備える/考える」**が自然。
NG2:対象が曖昧で“雰囲気だけ”になる
- ❌「いろいろ思いを馳せます」
→ 何に向けた気持ちかが読者に伝わりません。
✅「当時の選択に思いを馳せます」「故郷の家族に思いを馳せます」のように具体化。
NG3:軽い話題で多用して大げさになる
- ❌「ランチに思いを馳せます」
→ 日常ネタなら「楽しみにする」のほうが合います。
英語では?|近いニュアンスの言い回し
英語で直訳は難しいですが、意図別に寄せると自然です。
- 相手を気にかける:My thoughts are with you.(弔意・困難への配慮)
- 故郷や過去を思う:I think of my hometown. / I reflect on those days.
- 回想して気持ちが動く:It brings back memories.(思い出が蘇るニュアンス)
※弔意の文脈では、英語の定型表現のほうが“礼”が伝わりやすいことが多いです。
FAQ
Q1. 「思いを馳せる」の漢字はこれで合っていますか?
一般的に「馳せる」で問題ありません。「馳」は“走る・駆ける”系の意味が元にあり、そこから比喩的に「心を走らせる」イメージへ広がります。
Q2. 目上の人に使っても失礼ではない?
失礼ではありません。むしろ丁寧です。ただし、相手の状況を断定しない形(「ご苦労に思いを馳せております」など)にすると安全です。
Q3. 弔事では「偲ぶ」とどちらがいい?
追悼を明確にしたいなら「偲ぶ」、控えめに心情を添えるなら「思いを馳せる」が使いやすいです。
Q4. 「思いをはせる」とひらがな表記でもOK?
フォーマル文書では漢字が一般的ですが、読みやすさ重視の媒体(ブログ、広報のやわらかい文体)ならひらがなも可です。文章のトーンに合わせて統一してください。
まとめ|「思いを馳せる」は“離れた対象”に、具体名詞で使うと美しく決まる
- 「思いを馳せる」は、離れた人・出来事に心を向ける丁寧表現。
- 迷ったら、“何に”を具体名詞で置く(ご苦労/故郷/創業期/在りし日 など)。
- 弔意なら、控えめ=「思いを馳せる」、追悼を明確に=「偲ぶ」。
このページの「例文」だけでも、次に挨拶文を書くときの“最後の一文”が迷いにくくなります。送別・弔意・周年の用途に合わせて、使えそうな型をメモしておくのがおすすめです。